3/10(木)開催「グローバルガイドラインを踏まえた水目標設定と取組み方針」
2022年3月10日(木)にオンラインセミナー「グローバルガイドラインを踏まえた水目標設定と取組み方針」を開催いたしました。
開催概要
- テーマ :グローバルガイドラインを踏まえた水目標設定と取組み方針
- 開催日時:2022年3月10日(木)11:00~11:50
- 開催方法:オンライン(Zoom)
- 主催 :八千代エンジニヤリング株式会社 水リスクラボ
- 参加費 :無料
- 参加人数:118名
昨年のCOP26の開催などによって気候変動への取組みが世界中で加速する中で、水や生物多様性、森林等の自然資本の持続可能な取組みに関する検討も徐々に進んでいます。
2022年にはSBTNやTNFDといったイニシアチブによって、自然資本に関する新たなフレームワークの導入も見込まれており、今後は企業も様々な分野におけるサステナブルな対応が求められてきます。
水の分野では、これまでに様々なグローバルガイドラインが公表されてきました。それぞれのガイドラインは水環境の保全に取組む際の統一された考え方のもと、リスクや影響の評価方法や目標設定、対策実施などについて、ケーススタディなどを交えながら説明されており、企業にはガイドラインに則った行動が求められます。
しかし、水に取り組む企業のご担当者様からは「具体的にどのような手順や情報を用いて目標やそれに紐づく取組みを決めていけばよいのか」とお悩みの声も多く寄せられているのも現実です。
本セミナーでは、各種グローバルガイドラインの概要や統一された考え方などについて解説するとともに、それに基づいてどのような方法で企業の目標を定めていく必要があるのかについて説明しました。
すでに水に関する目標や取組みを進められている方々も、自社の行動がガイドラインのどの部分に該当するのか、また、正しい考え方やステップを踏んでいるのかを確認していただけたかと思います。
質疑応答ではたくさんのご質問をお寄せいただきました。文末にQ&Aを掲載いたしますので、ご参考になれば幸いです。
次回のオンラインセミナーは、4月15日(金)の開催を予定しております。テーマについて詳細が決まり次第、改めてメルマガからご案内させていただく予定です。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。
質疑応答
カーギル社の場合は具体的に設定した削減目標をどのような頻度でモニタリングしているのでしょうか。
モニタリング頻度や方法は明記されていませんが、WRIとカーギルの関連データやガイダンスは急速に更新されていくため、3〜5年ごとに目標設定を見直すことを推奨しています。
プロセス重視と成果主義の目標設定は、どちらが推奨されているのでしょうか。それとも企業ごとに選択すればよいということでしょうか。
企業の事業と水との関係性や、バリューチェーン上の各セクションによってどちらの目標とすべきか異なってきます。
その選択は、業種や企業規模、情報へのアクセス、ステークホルダーの意見、地理的分布などの要因に左右されます。
水リスクがサプライヤーの拠点で大きい場合、それらに対する取組みはどのような方法で進めれば良いのでしょうか。すでに現地政府やNGOなどが実施しているプログラムに参加するしかないのでしょうか。
まずは自社と関係しているサプライヤーの情報や原材料の生産地域を把握する必要があるかと思います。
その上で、サプライヤーが水リスクを評価しているかを確認し、実施している場合はその情報収集を行うことで、リスクが高いとされている内容から自社がどのように影響を受けるかを評価できます。サプライヤーが評価を実施していない場合は、サプライヤーの位置情報などから自社でリスクを評価するか、サプライヤーとのエンゲージメントを通じて水への対応を促す必要があります。
成果主義の目標設定の事例では、水ストレスが40%以上の流域を40%以下にするような取水量の削減が示されていましたが、流域では自社の工場だけでなく、他の工場や農業でも取水している中で、削減量をどのように設定すればよいのでしょうか。
流域全体で水ストレスを40%以下にしなければならないため、その流域の取水量全体を削減していく必要があります。
SBT for Waterのドラフトガイドラインでは、各水利用者の貢献度の考え方が例示されており、全ての企業が一律の割合で絶対量を削減する「影響の縮小」や、企業の行動力や経済力に応じて分配する「経済的能力」、削減に対する費用の低い企業ほど高い削減目標を設定する「限界削減費用」などの貢献度の設定方法がありますが、現在は「影響の縮小」の考え方での削減目標設定が一般的となっています。
流域全体での影響低減に取組むことが望ましいということですが、流域全体のモニタリング(水量や水質など)には、どのような手法があるのでしょうか。
流域の管理機関や公的機関が公開している水量や水質に関するデータを収集し、それらの値に変化がないかを確認するなどの方法があります。
投資家のニーズの一つとして、水リスクへの対応があるとお聞きしましたが、投資家ニーズを満たすうえでの目標設定における基準や目安はあるのでしょうか。
リスクに対して合理的に対応できている目標であれば良いのでしょうか。
セミナーでも説明した通り、どのような考え方で目標を設定したのか、また、その目標をどのように達成していくのかを論理的に説明できる目標を設定するとともに、CDPや自社のHP・レポートなどを通して適切に開示することが必要です。
目標設定について、ストーリー性をもって社内外に説明することが重要だと理解しました。対外的な情報開示においても、設定した目標だけではなく、設定した背景や分析結果、取組内容も示せるようにすることが求められていることが分かりました。
一方で、機関投資家や外部評価機関等からは、気候変動ほどの情報開示要請がないと認識しております。水に関してどの程度の情報開示を求められているのでしょうか。
SBTNやTNFDなどの検討も進められていますので、それらの公表に合わせて情報開示の要請も加速していくと考えます。
Sustainalytics E.1.2.7.1の水リスク管理で開示が求められている項目に、「水リスクの状況に応じた水指標に関するレポート」というものがあります。これは目標を設定し、その目標に対する進捗の報告という意味でしょうか。
あるいは、拠点の水リスクに対してどのような指標・目標を設定したか、という考え方のレポートという意味でしょうか。
ESG評価機関であるアメリカのモーニングスターグループのサステイナリティクスによるESG調査の内容についてかと存じますが、弊社で詳細な確認ができかねます。
ただし、企業の環境に対する取組みを評価するという点で機関投資家などが求めている情報としては、どのような考え方で目標や指標を設定したかだけでなく、その進捗状況も含めた報告が必要だと考えます。(CDP水セキュリティにおいても、目標の進捗率を求められています)
流域を考慮した目標を作成するにはどのくらい時間がかかりますか。詳細な流域の確認には1年間くらい(雨季や乾季のデータ測定などで)は必要になるのではと考えております。
実際に現地での測定を行わなくとも、行政などの公的機関が公表している過去のデータを用いて流域の評価を行い、目標を設定することが可能です。
弊社での検討期間としては、1拠点あたり4〜5ヶ月程度となります。
紹介していただいたガイドラインのどれか一つを参考に目標設定をするとすれば、どういった視点で参考にするガイドラインを選定するとよいでしょうか。
各ガイドライン間で水リスクに取り組む際の考え方は統一されていますので、どれか一つを参考とするというよりは、統一された考え方をもとに目標を設定するのが望ましいと考えます。
事業で水を使わないような企業の場合(サービス業界など)、リスク評価などを行う意義はあるでしょうか。
水をほとんど使用しない企業の場合、直接操業において水量や水質に関するリスクが発生する可能性は低いと思われますが、取り扱っている製品やサービスの上下流で水を使用している場合は、サプライヤーのリスクを評価する必要があります。
また、サプライチェーン上でも水を使用しないようであれば、事業への影響という観点でサービス拠点の水害リスクやWASH(水衛生)についての確認が必要です。
AWS取得に向けて進めたいのですが、これは流域内の多くの企業が同じく取得に向けて進む必要があると考えています。自社以外の企業に対してどのようにアプローチすればよいでしょうか。
拠点が水に関連する企業の協議会などに参加している場合は、そこでの発信や呼びかけが可能かと思います。
また、流域管理者(行政機関)等とコミュニケーションをとりながら、流域関係者全体で地域が抱える水問題の解決に向けた活動を推進していくことも必要になってくるかと思います。
Aqueductでは広域の評価のため、目標設定の際には小流域での詳細なリスクの把握が必要とのことですが、詳細把握の手法について代表的な手法やトレンド、今後スタンダードな考え方になりそうなものはありますでしょうか。
拠点数が多い企業などもあるため、グローバルガイドラインでは、優先拠点を抽出するために、まずはグローバルツールなどを用いて概略水リスク評価を行い、リスクの高い拠点を中心に詳細評価をすることが推奨されています。
詳細評価では、流域内の公表データや文献などを活用することが例として記載されています。
プロセス重視の目標は、努力目標になると思いますが、それでも外部からの評価は上がるのでしょうか。
自社の事業と水との関係や拠点のリスクを踏まえたうえで、プロセス目標を設定しているのであれば、外部から評価されないことはありません。なお、いずれの目標も努力目標ではなく、達成することを前提とした目標とすることが望ましいと考えます。
AqueductなどのツールはIPCC-AR6など気候変動の最新知見を反映したものと考えてよいものでしょうか。
Aqueductの将来のリスクについては、IPCCの温室効果ガス排出シナリオと社会経済シナリオをもとに評価されています。
上記以外のセミナーを開催していますので
ぜひお気軽にご参加ください。