10/26(水)開催 「今話題のSBTs for Natureに基づき水の目標設定手法についていち早く解説!」

2022年10月26日(水)にオンラインセミナー「今話題のSBTs for Natureに基づき水の目標設定手法についていち早く解説!」を開催いたしました。

開催概要

  • テーマ :今話題のSBTs for Natureに基づき水の目標設定手法についていち早く解説!
  • 開催日時:2022年10月26日 (水) 11:00 ~ 11:50
  • 開催方法:オンライン(Zoom)
  • 主催  :八千代エンジニヤリング株式会社 サステナビリティNavi
  • 参加費 :無料
  • 参加人数:149名

現在、土地利用の変化、水資源の利用、廃棄物の排出などの人間活動による圧力が原因で自然が急速に劣化していると言われています。自然の劣化を防ぐには、企業が中心となって事業活動に伴う自然への圧力を十分に減らしていかなければなりません。

 

こうした背景から、GHG排出量を対象とした従来のSBTを自然資本全般に拡張したScience-Based Targets for Nature(通称SBTs for Nature)の開発が進められており、2023年第一四半期の正式版リリースに向け、他の分野に先駆けて水に関する目標の設定手法(ドラフト版)が9月15日に公表されました。
水に関する目標の設定手法については、これまでも「流域の文脈を考慮した」目標を設定するためのガイダンスが公表されてきましたが、今回公表される手法は、初めて「科学的根拠に基づいた」目標を設定できる手法となっております。

 

本セミナーでは、SBTs for Natureのドラフト版ガイダンスを基に、水目標を優先的に設定するべきサイトを決定するのに必要な情報や優先順位付けの方法、個別のサイト(流域)を対象とした3種類の水目標設定手法等について、「水量」と「水質」の両者の観点でご説明しました。

 

質疑応答ではたくさんのご質問をお寄せいただきました。文末にQ&Aを掲載いたしますので、参考にしていただければ幸いです。

 

次回以降のオンラインセミナーについては、詳細が決まり次第メルマガよりご案内させていただく予定です。
皆様のご参加を心よりお待ちしております。

質疑応答

SBTs for Natureでのマテリアリティ分析などの一連の対応と、TNFD、ISSB(CDSB)、CSRD(ERSR)、GRIとの整合性はあるのでしょうか。

STEP 1, 2のドラフト版ガイダンスには、SBTi、TNFD、自然資本プロトコル、生物多様性プロトコル、CDP、GRI等の外部フレームワークと整合していることが記載されています。特にTNFDにおいては、ナレッジパートナーの一つとしてSBTNが参画しております。そのため、考慮するべき影響要因はSBTNの圧力カテゴリと同じですし、事業にとって重大な影響要因を特定すること、サイトの評価を行って優先順位を付けることなど、共通点が多数あります。

SBTs for NatureとTNFDは連動していくものなのか、連携しているものなのか教えてください。又、LEAPアプローチへの検討活用以外にもTNFDに合致しているものはあるのでしょうか。

SBTs for NatureとTNFDとの関連については、Q 1に対する回答をご参照ください。なおTNFDは、LEAPアプローチで検討した内容を「ガバナンス」「戦略」「リスク管理」「指標と目標」の4つの柱に沿って開示するものです。

SBTs for Natureのメリットについて教えてください。

SBTs for Natureに取り組むメリットとしては、例えば以下のようなものが挙げられます。
・自社が取り組むべき環境課題が明確になる
・自社の目標に対する妥当性が保証される
・規制や政策の変更に先んじた行動が可能となる
・TNFDにおけるLEAPアプローチの検討に活用できる
・生物多様性ノーネット・ロスやネイチャー・ポジティブの達成の指針になる

SBTs for NatureとCDPの関連・関係性を教えてください。SBTs for Natureの設定が、今後企業評価(例えばCDPなど)で評価対象となる可能性はありますでしょうか。

CDPはSBTNのパートナーとして、特に淡水分野の目標設定手法の検討に大きく係わっています。そのため、CDP気候変動においてSBTiの認定取得の有無が採点に影響するように、いずれCDP水セキュリティにおいても(場合によってはCDPフォレストにおいても)、SBTs for Natureに準拠した目標設定の有無が評価対象になる可能性はあります。

SBTs for Natureのガイダンスを開発されているScience Based Target Network(SBTN)は、どのようなバックグラウンドの方々(国・組織)で構成されている組織でしょうか。貴社以外にも日本企業がメンバー等で参入/関与されていれば、教えてください。

SBTNは、WWFやCDP、IUCN等の様々なNGOや研究機関等に所属されている方が集まって、SBTs for Natureの開発・運用を行っている機関です(SBTNにのみ所属されている方もいらっしゃいます)。そのため、所属されている方の国籍は様々ですが、欧州や北米の方が多いように見受けられます。
弊社は、正確にはコーポレートエンゲージメントプログラム(CEP)という、開発中の目標設定プロセスに対してフィードバックを行うプログラムのメンバーですが、弊社以外にCEPに参入している日本企業は、弊社が把握している範囲ではキリンホールディングス(株)様、日本電気(株)様、(株)LIXIL様、Waara(株)様になります(2022年10月26日現在)

ローカルモデルとは何か教えてください。SBTs for Natureに具体例が記載されているのでしょうか。又、適用されている流域は具体的にどちらにあるでしょうか。

まず、ここでいうモデルというのは水文(すいもん)モデルを指しており、コンピューター上で地球上の淡水(河川や地下水など)の動きをシミュレーションするためのプログラムになります。ローカルモデルというのは、対象とする地域の特徴(地形、降水量分布、土地利用分布など)を反映させ、シミュレーション結果が河川流量等の実際の状況を再現できるようにしたものを指します。ローカルモデルを構築することのできるプログラムには様々なものがありますが(GETFLOWSなど)、STEP 3のドラフト版ガイダンスには具体例は示されておりません。
日本でローカルモデルが開発されている地域としては、熊本地域(菊池川・白川・緑川流域)、福井県大野盆地などがあります

なぜ、「特定期間に許容される最大取水量」になっているのか、背景や理由を教えてください。

これについてはドラフト版ガイダンスに明記されていないため、あくまで弊社の想像になりますが、目標のベースラインを取水量の5年間の平均値で設定するようになったことが要因かもしれません。5年間の平均を取ると、「取水量をXX年比で○○%削減する」という表現ができないため、許容される最大取水量で表現することが検討されていると推察します。

努力の均等配分の考え方は、これまでに削減努力してきた企業はそもそも削減余地が限定されており非常に不利ですが、こちらは仕方がないのでしょうか。

これまでの削減努力については、目標のベースラインの設定で考慮されています。近年削減努力を続けてきた企業は、5年間の平均値で設定するベースラインが最新年よりも大きい値となるため、ある程度削減努力が反映された状態からスタートすることになります。
また、現状では「努力の均等配分」が指定されていますが、のちのバージョンでこれまでの削減努力を反映できる配分方法が追加される可能性もあります。

流域によって目標の絶対値が変わるので、流域ごとに設定した目標を統合したものが企業全体での目標になると思います。企業努力の外部評価は、絶対値での評価にならないということになっていくのでしょうか。

おっしゃる通り、外部に公開する目標は流域ごとの目標値を統合したものになると思われます。企業努力に対する外部評価については、目標の進捗状況や、目標を達成した流域の割合などで評価されるようになるかもしれません。

環境流量要件を満たせているエリアはどの程度あるのでしょうか。例えば、水が豊富な地域は水削減目標の設定が必要ない、といったことが起きるのでしょうか。

グローバルで環境流量要件の達成状況を把握するのは、現状では困難です。ただし、SBTNから流域全体で必要な圧力の削減率を特定するツールが公開されましたら、これを用いて把握できるかもしれません。
水が豊富で水需要量も大きくない地域は、すべての月で環境流量要件を満たせているとは限りませんが、多くの月で目標設定の必要がないという可能性はあります。

窒素とは、アンモニア、硝酸関係なく、T-Nと言う理解でよろしいでしょうか。

ドラフト版ガイダンスでは「硝酸態」などの指定はなかったため、T-N(全窒素)と認識しています。

環境流量要件と栄養塩濃度基準(窒素・リン)が既に公開されている流域は、具体的にどちらにあるでしょうか。

環境流量要件と栄養塩濃度基準の公開状況は、網羅的には把握できておりませんが、例えば、環境流量要件はオーストラリアのMurray–Darling流域で区間別に設定されています。

「水質汚濁物質」の対応を行うと、「簡易的に生物多様性の評価を行った」と言えるのでしょうか。

SBTs for Natureでは、「水質汚染物質」カテゴリは生物多様性の劣化を招く要因の一つとされています。そのため、「水質汚染物質」の対応を行うことで結果的に生物多様性の劣化を防ぐことになります。
また、STEP 2において、「種の絶滅リスク」を考慮してサイトの優先順位付けを行うことが要求されておりますので、STEP 2の過程で「簡易的に各サイトの生物多様性の評価を行う」ことになります。

淡水の種を検討の中心にしているように思いますが、モニタリングの議論はどのように進んでいるでしょうか。

SBTs for Natureは現在、種や生態系等を要素とする生物多様性に影響を及ぼす「圧力」に対して、目標設定やその後の行動をとることを求めているため、淡水の種を直接モニタリングすることは現在のプロセスには含まれていません。
しかし、今後のバージョンに淡水の生物多様性に着目した目標設定手法が含まれることが示唆されているため、将来的には淡水の種のモニタリングを必要とする可能性もあります。

STEP2における種の絶滅リスクはどのように評価するのでしょうか。又、非永年性作物とは何か教えてください。

種の絶滅リスクは、IBATというwebツールのSTART(Threat Abatement)というレイヤーにより位置情報から評価することが可能です。STARTのスコアは、IUCNレッドリストのランクと、各種の生息域内の存在比率から算出されます。スコアが高い場所は、現在比較的多くの絶滅危惧種が存在する地域、あるいは、深刻な絶滅危惧種が存在する地域になります。
非永年性作物は、種または植付けをしてからおおむね1年以内に収穫され、複数年にわたる収穫ができない作物(水稲や麦等)を指します。本セミナーでは、Sectoral Materiality Toolにおいて選択するセクターの例としてお示ししました。

SoNpとSoNgについて、もう少し詳しく教えてください。また、SoNgを把握するためには、どのようにすればよろしいのでしょうか。

「水利用」カテゴリのSoNPは「水利用可能性」で、これはAqueductというwebツールのWater Stress(水ストレス)というレイヤー等により評価することが可能です。水ストレスは、「流域全体の利用可能な水資源量に占める水需要量(取水量)の割合」で表され、降水量等の水資源の供給が少ないにもかかわらず、水需要量が多い地域で高くなります。「水質汚染物質」カテゴリのSoNPは「水質汚染の状況」で、これはAqueductのCoastal Eutrophication Potential(沿岸部の富栄養化の可能性)というレイヤー等により評価することが可能です。沿岸部の富栄養化の可能性は、水域に含まれる窒素、リンおよびシリカの量が多いほど高くなります。
SoNGとその把握方法については、Q15に対する回答の「種の絶滅リスク」に関する記載内容をご参照ください。

圧力(負荷の程度)を定量的に判定するならば、その算定方法はISOとしてルール化されているLCA手法とも関連するのでしょうか。それとも全く別の算定方法でしょうか。

ドラフト版ガイダンスでは、LCA手法による圧力の推定も推奨されています。

望ましい自然状態を表す閾値とは、具体的にどのように定められているものなのでしょうか。

望ましい自然状態を表す閾値である環境流量要件は、世界的に共通した定義や設定方法は存在しないので、一概には言えませんが、対象となる河川区間に生息する代表的な種が生存(産卵や移動を含む)するのに必要な水理条件(水深や流速など)等を考慮して、決定されるものと思われます。

SectoralMateriality Toolはどこから入手できますか。詳細を教えてください。

Sectoral Materiality Toolは現在開発中のためまだ公開されていませんが、2023年第一四半期の「SBTs for Nature」公開までに、SBTNのwebサイトからアクセスできるようになるものと思われます。

sbtn draft guidance は公開されていますか。誰でも見られるものでしょうか。

【セミナー時の回答の訂正】セミナー時の質疑応答では、「SBTNのwebサイトにて公開されており、誰でもダウンロード可能」と申し上げましたが、誤りでした。正しくは、「9/15~10/14の期間は、SBTNのwebサイトにパブリックコンサルテーションに必要なリソースとして公開されていたが、現在はリソース一覧に掲載されていない」となります。

上記以外のセミナーを開催していますので
ぜひお気軽にご参加ください。

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