積水化学工業株式会社
支援事例

水リスクマネジメントは企業価値維持に不可欠。
5年ぶりのリスク評価から全拠点での目標設定へ

八千代エンジニヤリング株式会社のサステナビリティNaviが支援した、積水化学工業のご担当者さまと当社コンサルタント

左より、
積水化学工業株式会社 梶谷嘉則さま
         同 三浦仁美さま
    当社コンサルタント 佐藤怜
            同 中野晴康

積水化学工業株式会社

事業部名:ESG経営推進部
担当者:三浦仁美さま、梶谷嘉則さま
業種:化学メーカー
従業員数:26,918名(連結)

相談の背景

  • 5年前に策定した水リスクマネジメント方針に最新状況を反映させたうえで、全社的な目標を設定したい

  • サプライヤーアンケートの機能性を高めつつ、回答負担を軽減したい

導入の決め手

  • 水リスク分野の知見が豊富で、サービスの質が高い
  • これまで依頼したいずれの案件でも、社内関係者の満足度が高い

支援の効果

  • 社内で水リスクに関する知見が深まった
  • 2025年度に国内生産拠点・研究所を対象とした水リスク評価・調査を実施し、国内全拠点の目標設定につなげた
  • 2026年度には海外生産拠点・研究所を対象に調査・評価を進め、海外全拠点の目標設定を行う計画を策定した
  • サプライヤーアンケートの回答率が高まった

サービスの質の高さと誠実な対応に満足

―― 今回は、水リスクに関する目標の再設定と、サプライヤーアンケートの改良についてご支援の機会をいただきました。背景にはどのような課題がありましたか?

梶谷 水リスク目標については、大きく3つの課題認識がありました。

1つ目は、目標設定の前提となる水リスク評価の再実施です。グローバルの生産・開発拠点を対象とした評価は、最後に実施したのが2020年でした。そのため、拠点の状況や社会環境の変化を踏まえ、取り組みを見直す必要があると考えていました。

2つ目は、目標設定と取り組みの全社的な推進です。これまでは水リスクの高い拠点に目標を設定していましたが、今後は低リスク拠点にも目標を定め、組織全体で取り組むことが理想だと考えていました。

3つ目は、水リスクマネジメントの継続的な運用です。水リスクを取り巻く状況は常に変化しているため、定期的にリスクを再評価し、目標や取り組みを見直していける仕組みを構築したいと考えていました。

また、サプライヤーアンケートについては、独自の調査票を用いて環境情報を収集していますが、サプライヤーの回答負担を軽減しつつ、実態をより的確に把握できるよう、設問の改善が必要だと感じていました。

積水化学工業でサステナビリティを推進する梶谷嘉則さま

―― かねてより継続してご依頼くださっていますが、当社のどのような点にご満足いただけていますか?

梶谷  ひとことで言えば「質の高さ」です。水リスク分野における豊富な知見に裏打ちされたサービスを提供いただいていると感じています。

これまで複数の案件をご一緒させていただきましたが、いずれにおいても社内の満足度が高かったことが、継続してお願いしている大きな理由です。また、社会動向や基礎的な事項の相談から、プロジェクトにおけるさまざまな要望まで、一つ一つに誠実かつ丁寧にご対応いただいており、大きな信頼を寄せています。

積水化学工業でサステナビリティを推進する三浦仁美さま

―― 当社のご支援を通して、どのような変化がありましたか?

梶谷 まず、水リスク対応を推進する立場として、自身の知見を深めることができた点が挙げられます。プロジェクトを進める中で、コンサルタントである佐藤さんや中野さんの専門的な知見を共有いただき、議論を重ねることで理解が深まりました。人材育成という観点でも、外部の専門家の支援を受けることには非常に大きな価値があると感じています。

三浦 水に関する取り組みにおいて、企業に何が求められているか、単なる規制遵守を超えて何をするべきか、ディスカッションの機会や示唆をいただきました。我々の中で腑に落ちた感覚が生まれ、社内での議論も進みやすくなりました

梶谷 事業への影響を金額で表現した点については、社内の反応が非常に良かったと感じています。特にリスクマネジメント部門から評価を得ることができました。加えて、各事業所からも「このような取り組みを行っているのか」といった声があり、社内での認知が広がったと感じています。

全拠点を対象とした目標設定を進め、全社的な水リスク対応の推進へ

—— 水リスク目標について詳しくお聞かせください。新たに設定した目標は、従来のものとどのように異なりますか?

梶谷 先ほどの話と一部重なりますが、まず大きな違いとして、目標設定の範囲を全拠点へ広げていく枠組みに移行した点が挙げられます。従来は、水リスクが高いと評価された拠点に目標を設定していましたが、現在は国内の生産拠点および研究所を対象に 、それぞれの機能や実態に応じた目標設定を行い、今後は海外の生産拠点および研究所にも同様に目標設定を行う計画です。こうした取り組みを通じて、水リスクへの対応を全社的に推進するための基盤整備を進めています。

また、水リスクが事業に及ぼす影響について、損失額として定量的に表現し、目標設定につなげました。各拠点に対しては、この金額規模を踏まえた対策の検討を推奨しており、全社としては損失想定額の低減を目標としています。

佐藤 行動目標を設定したのも、新しい点ですね。アンケートによって各拠点の状況を把握し、拠点ごとの現状と「目指す姿」とのギャップを埋めるためのアクションを定めました。

目標を設定するにあたっては、SBTs for Natureのグローバルモデルを活用しました。拠点の立地エリアにおける「水量・水質の望ましい状態」と実態を把握できるツールです。

ただし、グローバルツールでは、評価と実態の差が大きいことも少なくありません。特に日本の場合、リスクが低いと判断されがちですが、地域によっては実際に渇水が起こっています。このギャップを埋めるため、各拠点へのアンケートを通してリスクの発生有無を調査し、評価に反映させました。

ほかにも、既存の目標に対する進捗状況や、BOD(生物化学的酸素要求量)、COD(化学的酸素要求量)といった環境基準も考慮して目標を検討しています。

回答負担減と情報網羅性を両立させたアンケート

—— サプライヤーアンケートは、従来と比較してどのように改良されましたか?

佐藤 従来は記述式の設問が多かったため、回答負担が大きく、未回答であったり意図と異なる回答になったりという課題がありました。そこで記述式を選択式に置き換えたほか、前年度の回答を参照しながら入力できるようにしました。前回から変わっていない項目はコピー&ペーストでき、変化した項目は把握しやすいシステムです。

水リスクについては、御社がサプライヤーから調達している製品の生産拠点に特化して、水量、水質、水害と多角的に情報を収集できるようにしました。また、水リスクだけでなく、気候変動、生物多様性、資源循環と、環境全般の調査を1回のアンケートで完結できるようにもしています。これらの工夫によって、情報の網羅性と回答の回収率の両立が叶いました。

中野 アンケートの集計もお手伝いしましたが、実際に記入率が上がっていました。回答負担を軽減した成果が表れているのだと思います。

積水化学工業のみなさまとサステナビリティNaviのコンサルタント

梶谷 これにより、サプライヤーの取り組み状況をより的確に把握できるようになりました。水リスク低減に向けたサプライヤーエンゲージメントを進めるうえで、必要な情報を効率的に収集・整理できるようになったと感じています。

佐藤 水リスクに特化したサプライヤーアンケートを実施している企業は、あまりありません。その点だけでも、御社の取り組みは非常に先進的だといえます。

水リスクマネジメントは企業価値の維持に不可欠

—— 御社は水リスクマネジメントに関して先進的に取り組んでおられますが、どのような意義を感じておいでですか?

梶谷 気候変動に伴う干ばつや洪水の増加、人口増加による水需要の拡大、排水による水質汚染など、水資源を取り巻く状況はグローバル規模で深刻化しています。実際に、取水制限や排水規制による操業停止、サプライチェーンの寸断といった事例も見られています。

また、投資家をはじめとするステークホルダーからは、水管理に関する情報開示の要請が強まっており、その内容によって企業が評価されます。こうした状況を踏まえると、水リスクマネジメントは、事業のレジリエンスを高めると同時に、中長期的な企業価値の維持・向上のために不可欠であると認識しています。

三浦 「積水化学工業」という社名に「水」が入っていることもあり、水を事業に不可欠な資源として重視しています。同時に、排出という観点でも水への配慮は欠かせません。複数の観点が重なり、水に真剣に向き合う意識が醸成されてきました。

―― 今後はどのような施策をご検討されていますか?

三浦 「健全な水に満ちた社会の実現」を目指すためにも、企業リスクを最小化するためにも、水リスクマネジメントの高度化を続けてまいります。また、弊社の環境長期ビジョンに掲げている「生物多様性が保全された地球」の実現をめざし、「ネイチャーポジティブ」に向けた取り組みとしても、着実に検討を進めていきたいと思います。

佐藤 国内拠点での目標設定やサプライヤーアンケートの整備が一段落しましたので 、目標達成に向けた伴走支援を継続させていただければ幸いです。また、サプライヤーからの情報収集から一歩踏み込んで、サプライヤーとの協働や好事例(グッドプラクティス)の創出にも貢献できればと思っています。

世界では既に「水」が経営リスクとして認識されている

—— 水リスクマネジメントに悩む企業へのメッセージをお願いします。

梶谷 気候変動や資源循環と比べると、日本では水リスクを経営リスクとして捉え、戦略的に対応している企業はまだ多くないのが実情です。しかし、グローバルに目を向けると、水を安価かつ安定的に利用できるという前提は、既に揺らぎつつあります。水は、事業継続やサプライチェーン全体に影響を及ぼす経営リスクとして広く認識されつつあります

こうした状況の中で、水に関する目標を設定し、自社のみならずサプライヤーとも連携しながら水リスクを把握・低減していくことは、今後ますます重要になると考えています。

一方で、水リスクは気候変動とは異なり、地域ごとの差異が大きい点に難しさがあります。当社としても試行錯誤を重ねながら取り組んでいるところです。同様の課題意識を持つ企業のみなさまとともに、水リスクの低減に取り組み、社会への貢献につなげていければと考えています。

三浦 気候変動や生物多様性が環境の重要テーマとして注目されている状況では、水リスクに取り組む優先度を下げている企業も多いかもしれません。しかし、水リスクマネジメントが重視されているのが国際的な潮流ですから、さまざまなステークホルダーを巻き込んで重要性を発信していきたいと思います。

我々も、製造業として水資源を活用する企業、水に関するビジネスを展開する企業として都度発信をしていくことで、水に取り組む重要性を社会に伝えていきたいと思っています。御社に対しても水の専門集団として、水リスクマネジメントの重要性をいろいろな場で発信し、この分野における日本のプレゼンスを高め、取り組みの加速をけん引していただきたいと期待しています。国際的な課題の解決に向けて一緒に頑張りましょう。

佐藤 水リスクに関しては、リスクの高い拠点だけでなく、低リスク拠点での目標も設定するよう投資家から要望される流れが生まれています。

水リスク目標の設定にあたって大きな課題となるのは、目標の基準や根拠をどうするかです。目標設定のガイダンスは存在しますが、うまく適用できない地域もあり、個別に検討しなくてはなりません。理想的な目標と実現可能性の折り合いをどのようにつけるかも重要です。

水リスク評価および目標設定には、多様な観点での判断と専門の知識が必要です。自社のみでは難しいとお困りの方は、お気軽にご相談いただければと思います。

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