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100年企業による「1.5℃目標」達成への貢献とSBT認定

フジパングループ本社株式会社

環境戦略部 三谷様
フジパングループ本社(以下、フジパン)における2030年に向けた温室効果ガス(GHG)排出削減目標が、パリ協定※1の目指す「1.5℃目標」に整合しているとして、2023年10月に「SBT(Science Based Targets)イニシアティブ」より承認されました。SBT認定の取得は製パン業界としては初です。

SBT認定を取得したGHG排出削減目標としては、「Scope1、2(※2)におけるGHG排出量を2030年までに2021年度比で42%削減」および「Scope3(※2)のGHG排出量を2030年までに2021年比で25%削減」となっています。

この認定取得に際して、フジパンの下記の利用サービスに伴うコンサルティングと申請支援を行いました。

※1 パリ協定:世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保ち、1.5℃に抑える努力をするという長期目標を掲げています。
※2 Scope1:事業者自らによるGHGの直接排出
  Scope2:他者から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出
  Scope3:Scope1、2以外の間接排出(事業者の活動に関連する他者の排出)

利用サービス
  • 概略調査
  • 詳細調査
  • 目標設定・
    ビジョン
  • 対策
  • 発信

課題

  • フジパン社内の気候変動対応に関する意識向上、GHG指標設定および算出方法など知見獲得
  • 創立100周年という重要な節目に合わせたSBT認定取得

サポート概要

  • SBT認定取得に向け、準備から算出、申請までの一通りについて、コンサルタントが伴走型で支援。GHG排出量の算定に向けた情報収集・整理、算定実施および社内マニュアル作成、SBT申請手続き(事務局との質疑応答含む)、GHG削減施策の検討および社内説明会を開催した

国内製パン業で、SBT認定の先駆けを

フジパンは長年、GHG削減や気候変動対応に関する活動に取り組んできました。これまでは、あくまで拠点ごとでの改善活動などの一環としての取り組みとなっており、全社横断的な活動の仕組み構築が始まったのは比較的最近です。2020年末の日本政府のカーボンニュートラル宣言などにより、国内で気候変動対応に対する意識が急激に高まったことから、取引先からのプレッシャーもより強まっていました。

その頃、取引先から「Scope 3」「SBT(Science Based Targets)」といった指標に基づいたGHG削減目標に関する問い合わせを受ける機会が出ていました。当時のフジパンではそうした指標に関する知見があまりなく、一から調査を行うところから開始しました。調べていくうちに、フジパンにおいてもその対応が必須であるという認識が高まっていきました。

フジパンを含む国内製パン業の各社においても、もちろん環境対応の取り組み自体は長年行われていましたが、SBTについては取り組み事例がまだ見られませんでした(11/22時点)。そういう背景もあり、取引先や株主などに対し、SBT認定が、環境問題に関して当社が真摯に取り組んでいることを具体的にアピールするための良い指標になるだろうと考えました。

大切な節目で、新しい取り組みのスタートを切りたい

Scope 3の算定については、他業界の先駆者の取り組み事例など情報が比較的あったことから、まず自社内の力で挑戦しています。しかしSBT対応については、具体的事例の情報が少ないこともあって、自社リソースのみで取り組むことに限界があると考えました。

また、フジパンは2022年5月に創業100周年を迎え、このようなフジパンにとって大切な節目と併せて、SBT認定が取れないかと考えていました。そうしたさなかで、SBT認定をサポートする団体や企業をいろいろ調べていくうちに八千代エンジニヤリングとご縁がありました。

八千代エンジニヤリングに相談させていただくと、100周年を迎えている時期のうちにSBT認定が現実的にかなう計画を提示してくださったこともあり、支援をお願いすることにしました。算定方法や社内での仕組みづくり、申請時の英語でのコミュニケーションまでを一貫してサポートしていただけるということが心強いと感じました。

八千代エンジニヤリングのサポートが始まってSBT申請に至るまでは、2022年10月~2023年3月の約6カ月間でした。その後のSBT審査期間として費やした7カ月を含み約1年程度でSBT認定を取得できました。

共に同じ方向を見て進んでくれる、熱意ある頼もしいパートナー

八千代エンジニヤリングの担当者は、皆さん話がしやすくフレンドリーで、とても相談がしやすかったと思います。また、分かりやすい資料を用いた丁寧な指導もありがたかったです。

われわれは少人数の部隊で、全国に80以上ある当社拠点での取り組みやデータを取りまとめなければならなかったのですが、ヒアリングシートを用いた効率的な情報収集方法なども、八千代エンジニヤリングの担当者がうまくサポートしてくださいました。

また今回、バウンダリの設定やGHG算定にあたっては、週1回の頻度で当社にお越しくださり、対面での協議を実施するなど密な対応をとっていただきました。それ以外にも、SNSのチャットやWeb会議システムなどを用いたオンラインコミュニケーションを通して、クイックレスポンスで疑問や問い合わせに答えてくださいました。GHG算定方法については、他社の事例を資料としてまとめてくださり、それを基に自社に合った方法を一緒に探っていきました。

社内におけるSBT認定に関する認知や意識の向上についても、社内説明会の場で、熱心かつ非常に説得力があるプレゼンテーションをしてくださるなど、役員や実務担当者の鼓舞に一緒に奮闘してくださり、頼もしいと感じました。SBT認定を進める中で、たびたび社内の意識調査を実施していましたが、明らかにその結果がよくなってきており、確かな手ごたえを感じました。社内の営業担当から、SBTについて問い合わせを受ける機会も増えました。

申請書類や事務局からの問い合わせでは、英語でのコミュニケーションが必要で、特に、問い合わせに対して48時間以内の回答が義務付けられていました。そこでも、英語のコミュニケーションを添削してくださるなど万全にアドバイスをしてくださいました。思いのほか大変だったのが、全く予期していなかった、申請時のシステムエラーでした。これには焦りましたが、八千代エンジニヤリングの担当者がSBT事務局への問い合わせに関して的確なアドバイスをくださり、非常に助かりました。

SBT以前に始めていたScope3の取り組みについても、指標や算出方法など指導してくださいました。

今後も、責任ある企業として、「1.5℃目標」達成への力強い歩みを

今回、SBT認定は乗り切りましたが、さらに2024年末までに「森林、土地および農業(FLAG)」の算定を行わなければなりません。このガイドラインが最近発表されたばかりであるので、公になっている知見がまだ少ないのです。

Scope3の数値も、今後、より削減していかなければなりません。そのために、材料メーカーの原料に関するデータを直接収集できるよう、今まさにメーカーに対する説明や交渉など、準備を進めているところです。

今後も責任ある企業として、パリ協定の「1.5℃目標」達成に貢献すべく、フジパングループとしての2030年の削減目標に向けたロードマップをこれからより具体化していきます。複雑かつ膨大となる環境関連のデータ収集も、システム化を進めていく計画です。

さまざまでかつ難易度の高い課題があり、いろいろと一筋縄ではいかないでしょうが、八千代エンジニヤリングから得られた知見をベースに邁進していきたいと考えています。

フジパングループ本社株式会社

フジパングループ本社株式会社は、愛知県名古屋市に本社を置く日本の大手製パン会社です。1922年5月に設立され、パンを中心とした食品の製造・販売、物流、弁当・惣菜の製造販売などを行っている。

https://www.fujipan.co.jp/

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