Project File22

豊かな自然と地域住民の幸せを守る風力発電事業を目指して

日本風力サービス株式会社/GPSSホールディングス株式会社

風力開発チーム 西川鈴音 様

GPSSグループ(以下、GPSS)は、再生可能エネルギーの開発および運営を専業で行っており、風力、太陽光、地熱、水力、バイオガス、電源と広範囲な事業に取り組んでいます。GPSS全体で、地域との協働事業を通じて、地域からサステナブルな社会を実現することを目指しています。

日本風力サービス株式会社(以下、日本風力サービス)はGPSSの一員であり、風力発電事業の開発および営を担う事業会社です。未利用資源である「風」を用いた、発電事業を地域と共同事業化し、売電で得られた収益の一部を地域に還元する 仕組みを開発しています。

鹿児島県出水市では、そのプロジェクトの1つである、(仮称)出水(いずみ)ウィンドファーム事業が進んでおり、八千代エンジニヤリングは、住民説明会や県環境影響評価審査会などへの対応を含めた環境アセスメントを実施してきました。

※環境アセスメントの支援のため、以下のサービスは該当しません。

利用サービス
  • 概略調査
  • 詳細調査
  • 目標設定・
    ビジョン
  • 対策
  • 発信

課題

  • 出水市における風力発電事業に係る環境アセスメントの実施
  • 地域住民の不安解消
  • 地域の環境保全を万全に行うこと

サポート概要

  • (仮称)出水(いずみ)ウィンドファーム事業に係る環境アセスメントに関する包括的支援

地域住民の不安を解消し、信頼してもらうための環境アセスメント

出水市は、再生可能エネルギーの地産地消などを通じて、2050年に二酸化炭素の実質排出量をゼロとする「ゼロカーボンシティ宣言」をしています。「(仮称)出水(いずみ)ウィンドファーム事業」は、カーボンニュートラル推進のための重要な事業です。この事業では、出水市市内に陸上風力発電所の設置を計画しており、2029年3月の運転開始を予定しています。出水市内、上鯖渕、上大川内、下大川内の各一部に風力発電機を最大14基設置。風力発電所出力は最大6万200キロワットを見込んでいます。風車の最大高さは180メートルにおよび、 40階の超高層マンションに匹敵する高さです。

この事業を進めるにあたっては、事業者が環境影響に関する調査や予測評価を十分に実施したうえで、地域の方々の意見に耳を傾けながら理解を得ることが重要と考えています。私は、鹿児島市内に赴任し、この事業の風車開発にかかわる中で、環境アセスメントを進めています。

出水市は、「日本一のツルの渡来地」があり、その渡来地は「鹿児島県のツルおよびその渡来地」として国の特別天然記念物に指定されています。当地は毎年10月中旬~12月ごろにかけて、1万羽を超えるさまざまな種類のツルたちが、越冬のためシベリアから渡来し、3月ごろまで越冬します。地域の方々は、ツルをはじめとする多様性に富む生態系と豊かな自然環境を愛し、大切にしてきました。

プロジェクトが公表された当初、地域の方々からは、賛成の声とともに、不安の声や厳しいご意見もいただきました。風車は出水市において持続可能な環境や社会を作るための重要な設備ではありますが、地域の方々にとっては未知の存在です。風車が建造されることで、最も大きな影響を受けるのは地域の方々です。「地域の動植物たちに悪影響はないのか」、「鳥獣被害が増えるのではないか」、「騒音に悩まされないか」、「土砂崩れが起こりやすくならないか」、「落雷があったらどうするのか」、地域の方々の不安はどれも共感できることばかりでした。

最初は、不安を持つ地域の方々に、「風車が立っても大丈夫ですよ。安心してください!」と力強くお伝えするにはどうしたらいいのか、夜も眠れなくなるほど悩みました。

地域の方々に自信をもって「大丈夫」とお伝えし、少しでも不安を緩和して信頼していただくための重要な取り組みが環境アセスメントです。大規模な事業を実施する前には、事業を実施する土地やその周囲の環境に、どのような影響が生じるのか、工事実施から施設稼働にいたるまで調査を実施します。その結果を公表して、地域の方々や地方公共団体などから意見をお伺いし、それらを踏まえたより良い事業計画を作り上げていきます。

前職では総合建設コンサルタントの環境部門におり、環境影響に関しては知識がありました。しかし風車開発にかかわるのは初めて。私だけではなく、日本風力サービスにとっても初の試みでした。そのため、風車の環境アセスメントについて教えてくれる人は、周囲には見当たりませんでした。

「一体、何から始めたらいいのだろうか」と、何もかも分からないまま、環境アセスメントに関わるコンサルティング会社を探しているうちに縁があったのが、八千代エンジニヤリングです。「本当に初めてなんです。右往左往してご迷惑をおかけするかもしれません」と言う私に、「一緒にやりましょう!」と元気づけてくださったのが八千代エンジニヤリングの皆さんです。

八千代エンジニヤリングの多岐にわたる支援

風車の開発は数年かけて行うもので、環境アセスメントもそれと並行して実施します。2020年7月から配慮書の手続きを開始。以降、方法書、準備書、評価書と関連図書の手続きを数年かけて実施していきます。その中で、関係市や県などの官公庁からの意見の取りまとめ、事業計画策定、説明会などを実施していきます。評価する環境要素は、法律で定められた項目で「大気環境」、「水環境」、「その他の環境」、「動物・植物・生態系」、「景観」、「人と自然との触れ合いの活動の場」、「廃棄物など」、「放射線の量」と多岐にわたっています。八千代エンジニヤリングには、これら環境アセスメント全般に対し、伴走支援をしていただいています。

国が法律として定める環境アセスメントの項目以外にも、シカなどの獣害による影響がありますが、この点への配慮は必須ではありません。法律として定められた項目以外への対応は、事業者にとってはコストと時間ともに負担となります 。しかし地域の方々にとって、地元で林業や農作業に影響を及ぼす獣害への関心は大きなものです。「地域と一緒になって事業を作り上げたい」というGPSSの信念、そして幼少期からずっと生き物を愛してきた私個人の思いとしては、法律で定められたこと以外にも、地域の方々の不安を解消することに取り組まなければならないと考えていました。その信念を、八千代エンジニヤリングの皆さんも共感してくださっていました。八千代エンジニヤリングの皆さんが野山や河川を歩きまわりながら、丹念に調査を重ねてくださいました。

生き物に関して風車設置による影響としては、バードストライク(鳥類の激突)が懸念されます。出水市にはツルのほか、クマタカなどの猛禽類が生息していますが、上位捕食者であるクマタカが減少すると、出水の生態系が崩れることになります。調査ではクマタカの出現範囲や営巣木の特定をしてくださり、それを踏まえて影響を低減できるよう風車の設置場所の見直しを行っています。
地域の方々からの不安には、生き物以外にも騒音などの生活に関する項目がありますが、いただいたご意見に対し、八千代エンジニヤリングの皆さんからは、丁寧に寄り添う回答をアドバイスいただいています。

生き物への愛という絆

これまでには、関係各所や地域の皆さんの意見と、八千代エンジニヤリングとともに実施した調査結果を受け、発電機の設置場所や基数、仕様、工事用車両ルートなどを検討しています。現時点は準備書の手続きフェーズで、地域住民の方々への説明会を終えたところです。この手続きにはあと1年ほど必要であり(取材時点)、その後に評価書の手続きを進めていきます。評価書が完成したら、いよいよ工事が開始されます。工事の開始は2026年1月を予定しています。

地域の方々からの意見や課題は、今後も引き続きいろいろ出てくると思います。一方で、地域の方々との良好な信頼関係も、着実に築けてきていることを実感しています。

私にとって非常にやりがいのあるプロジェクトではある一方、地域の方々からの厳しい声もいただきながら、未知のことについて多岐にわたる調査を長期にわたり実施しなければならず、心理的負担も非常に大きい取り組みであります。生き物への愛という共通の思いを持って、時には友人のようにおしゃべりをしながら、ずっとそばにいてくれる存在が、八千代エンジニヤリングです。これからもぜひ、一緒に伴走していただきたいと思っています。

日本風力サービス株式会社/GPSSホールディングス株式会社

日本風力サービス株式会社は、東京都に本社を置き、風力発電設備の設置・保守・管理を専門とする企業です。再生可能エネルギーの普及と持続可能な社会の実現を目指し、安全で効率的な風力発電の運営をサポートしています。最新の技術と専門知識を活用し、環境保護に貢献しています。

GPSSホールディングス株式会社は、サステナブルな社会の実現に向けて、太陽光、風力、地熱、水力、バイオガスなど幅広いエネルギー事業をはじめ、様々な事業に取り組んでいます。また、地域と一体となって、サステナブルエネルギーを生み出す発電所の開発、設計、建設、保守、メンテナンスなどの事業を展開しています。

日本風力サービス株式会社の公式ウェブサイトhttps://j-windservice.com/
親会社であるGPSSグループの公式ウェブサイトhttps://gpssgroup.jp/

お問い合わせ

ご不明な点はお気軽にお問い合わせください。
専門スタッフが不明点についてご説明いたします。