SBTs for Natureの最新動向② ~早期対応に向けた新たな経路と目標の拡大について~

2025年11月18日 (火)に、オンラインセミナー「SBTs for Natureの最新動向② ~早期対応に向けた新たな経路と目標の拡大について~」を行いました。

開催概要

  • テーマ :SBTs for Natureの最新動向② ~早期対応に向けた新たな経路と目標の拡大について~
  • 開催日時:2025年11月18日(火) 11:00 ~ 11:55
  • 開催方法:オンライン(zoom)
  • 主催  :八千代エンジニヤリング株式会社
  • 参加費 :無料
  • 参加人数:205名

近年、人間の活動による負荷が原因で、自然環境が急速に劣化していると言われています。これを食い止めるためには、企業が事業活動に伴う自然への負荷を回避・低減するとともに、自然を回復させるための行動をとることが不可欠であり、これらに関する目標設定のフレームワークとして、「Science-Based Targets for Nature」(通称:SBTs for Nature)の開発が進められています。

SBTs for Natureは、2023年7月公開のガイダンスにより、Freshwater(淡水)とLand(土地利用)に関する目標の設定手法が示されましたが、2025年10月現在までに、さまざまな進捗がみられています。例えば、SBTs for Natureの早期対応が可能となるように、バリューチェーンの評価を行う際に加速化経路を適用することで、対象範囲を限定できるようになりました。また、FreshwaterとLandのv2ガイダンス(ドラフト版)が公開され、目標の対象が地下水利用や土壌の質などに拡大されることとなりました。

そこで本セミナーでは、加速化経路によってどのように対象範囲を限定できるようになったのか、FreshwaterとLandのv2ガイダンスにより目標の対象がどのように拡大されたのかといった、SBTs for Natureの理解と導入に役立つ最新動向をご紹介しました。

質疑応答

STEP1でのマテリアリティスクリーニングは、そもそもどうやって実施するのでしょうか?

Materiality Screening Toolというwebツールにおいて、評価したい事業活動に該当する産業分類を選択することで、自然に大きな影響を及ぼしている要因を特定することができます。

圧力や自然状態の測定は自社のみでも可能ですか? プロトコルを見ながらやればできるものでしょうか。

圧力は自社の取水量などが該当するので、直接操業の場合は、拠点でモニタリングを行っていれば自社で評価可能です。上流の場合は、LCAデータベースなどを活用することが多いため、このようなデータベースを使い慣れている方は自社で評価可能だと思われます。自然状態はWater Risk Filterなどのwebツールを活用することが多いため、このようなツールを使い慣れている方は自社で評価可能だと思われます。

評価範囲は任意で絞り込めるということですが、将来的にはできるだけ広げていくことが期待されているのでしょうか?

ガイダンスには明記されていませんが、加速化経路を適用して対象範囲を絞り込んだ場合、将来的には拡大することを期待されていると認識しています。

自社の水源が地表水か地下水なのかの特定方法には、具体的にどのようなものがあるでしょうか?

自社で河川や湖沼から取水している場合、地表水、井戸で水を汲み上げている場合は、地下水になります。上水や工業用水を取水している場合は、水供給機関のwebサイトなどで水源を確認することができます。

水量に関する目標内のSBTN流域評価ツールの指定機関には、日本の場合、どのような機関が含まれますか?

国土交通省の河川事務所や地下水協議会などが該当する可能性があります。

聴講していて取り組みのハードルは高いのかなと思いました。サステナビリティNaviはSBTNに沿った目標設定について支援の経験はございますか?

実績は複数ございます。例えば、弊社は2023年5月から約1年間にわたり行われていたSBTNのパイロットプログラムに参加し、同プログラムに参加されていた企業様のFreshwaterとLandの目標設定をご支援しました。

事業として農業をしていない企業の場合、FreashWaterとLandのガイダンスについてあまり関係しないかと感じました。その理解でよいでしょうか。電子機器のようなものを製造している場合、スライド資料で関係する部分と関係しない部分を教えていただけると助かります。

電子機器製造の場合、冷却や洗浄に水を使用するのであれば、Freshwaterは対象となる可能性があります。Landについては、本セミナーでご紹介した「生産用地の再生・修復」に関する目標は対象外となる可能性が高いですが、「自然生態系転換なし目標」はバリューチェーン上流において対象となる可能性があります。

Freshwater量のglobal modelは地表水、地下水の分も公開されいますでしょうか。

地表水のグローバルモデルについてはすでに公開されています(https://www.waterfootprintassessmenttool.org/?b=sbtn)。地下水のグローバルモデルについては、2025年11月現在では開発中のようです。

Landについて、農場についての話にフォーカスしておりましたが、建設・不動産の場合も同じ考え方でしょうか?

建設・不動産の場合、本セミナーでご紹介した「生産用地の再生・修復」に関する目標は対象外となる可能性が高いですが、Landに含まれる「自然生態系転換なし目標」はおそらく対象になるかと思います。

Fresh Water 地下水について、工場の周辺の地下水情報を収集する際には、どのような行政機関等にアプローチするのは有効なのでしょうか。地表水の場合は、国交省の河川事務所にヒアリングなどを行いました。

地下水協議会や都道府県の環境部などが考えられます.

SBTNはどのような規模や業種の企業が実施しないといけないのでしょうか?TCFDのように義務化されるでしょうか?現在、社内でISSBやSSBJへの対応を検討していますが、SBTNはこれらと関連しますでしょうか?

SBTs for Natureは、企業の規模に応じて対応の義務が生じるといったことはないと思われます。SBTs for Natureに準拠した目標設定に取り組む場合は、業種によって設定するべき目標が異なります。ISSBは、今後TNFDフレームワークに沿った形で自然関連の要素が組み込まれる予定ですが、この中で要求されると思われる自然関連の目標設定は、SBTs for Natureのフレームワークの活用が推奨される可能性があります。

加速化経路を選択する際のデメリットがあれば教えてください。

デメリットとしては、目標を公開する際に、絞り込んだ範囲で目標設定を行ったことを明記しなければいけないことが挙げられます。

Fresh Waterの目標設定について、SBTs for Nature (Fresh Water)に沿って、地表水・地下水の目標を設定し、公表している日本企業はこれまでにあるのでしょうか?その企業・業界の特徴などもお聞きできたら幸いです。

SBTNのwebサイトに、ターゲットトラッカーという認定された目標が公開されるページがあるのですが、2025年11月現在では、日本企業の目標は公開されていません。

農地を開発する場合は、「自然生態系転換」という扱いにならないという理解でよろしいでしょうか?

農地は自然生態系に該当しないので、ご認識の通りです。

上記以外のセミナーを開催していますので
ぜひお気軽にご参加ください。

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