【2024年にCDP回答される方必見】スコアアップに必要な取り組みとは

「CDPに初回答する方必見! 概要と質問書内容を解説」で確認したように、CDPの質問内容は機関投資家などの要求をもとに作成されているため、高いスコアを獲得することは企業の市場における評価を高めます。また、TCFDなどの気候変動や環境への対応に関する枠組みに関連していることから、投資機関や世界市場で求められる基準と、自社の取り組みレベルのギャップを把握することに役立ちます。
そこでこの記事では、実践編として、自社の現状把握から必要な取り組みの実施に至るまでの、CDPの開示に向けた流れについて解説します。
CDP開示に向けた流れ
CDPを適切に開示していくためには、まず社会から求められている環境課題に対する取り組みについて確認する必要があります。そのうえで、自社の取り組みレベルとのギャップを把握し、必要な取り組みを実施していくことが重要です。
この記事では、CDPの開示に向けた流れを3つのステップで解説します。この流れを通して取り組みを実施し、その結果を適切に開示していくことは、高い評価を得ることにもつながります。
STEP1:求められる取り組みを確認する
まずは、社会から求められている取り組みについて確認します。確認には、投資機関などの要求をもとに作成され、気候変動などの枠組みに関連しているCDPの資料が役立ちます。
CDP公式サイトでは、以下に示すような資料を公開しています。これらの資料を踏まえて、求められる取り組みについて確認していくことが重要です。
【CDPの公開資料一覧と記載内容】
- CDP質問書:質問内容
- CDPガイダンス:各質問における回答の要点
- CDPスコアリング基準:各質問のスコアリング基準
- 開示サポート:日本企業向けの補足説明
STEP2:自社の現状を把握する
次に、自社の取り組みレベルとのギャップを把握するため、現状の把握を行います。前のステップで確認した内容を踏まえ、関連部署と協力しながら社内の環境に関するデータや取り組み、方針について現状を把握する必要があります。
環境課題に対する取り組みに関して、自社の現状把握に活用することができる基礎的なチェックリストの一部を掲載します。チェックリストと照らし合わせて、自社の取り組みができているか、もしくはデータを収集できているかなどを確認いただけるため、ご入用の方はお問い合わせください。
なお、チェックリストは「CDP questionnaires 2023 General」をもとに当社が独自に整理した情報です。企業によっては不要な項目や、追加で確認する項目があることにご留意ください。

図1. CDP気候変動のチェックリスト
「CDP questionnaires 2023 Climate change General」をもとに当社作成

図2. CDP水セキュリティのチェックリスト
「CDP questionnaires 2023 Water security General」をもとに当社作成

図3. CDPフォレストのチェックリスト
「CDP questionnaires 2023 Forest General」をもとに当社作成
STEP3:必要な取り組みを実施する
最後に、自社の取り組みレベルとのギャップを踏まえて、必要な取り組みを実施します。必要な取り組みを実施していくことで、企業はリスクの最小化や機会の最大化につなげることができます。
社会から求められる取り組みについて、CDPの得点率に基づき抜粋して解説します。
表1. CDPで得点率が高い取り組み
CDP質問書 | 得点率が高い取り組み(抜粋) |
|---|---|
共通する項目 | 環境課題に対するガバナンスの構築 |
バリューチェーンへのエンゲージメント | |
バリューチェーン全体のGHG排出量算定 | |
気候変動 | シナリオ分析 |
水関連情報(取排水量、排水水質)の収集 | |
水セキュリティ | 水リスクの特定 |
森林関連情報の収集・推定 | |
フォレスト | トレーサビリティの向上 |
第三者認証の採用 | |
環境負荷低減のための目標設定 |
共通する項目
環境課題に対するガバナンスの構築
環境課題に対するガバナンスでは、取締役会(または取締役会と同等の会議体)が気候変動・水セキュリティ・フォレストの課題について監督・責任を負っていることが重要です。
具体的には、取締役レベルで環境課題に対する戦略の策定・見直し、目標の策定・進捗確認などの監督を行い、責任者もしくは責任を負う委員会を設けていること、取締役に環境課題に関連する長期的なインセンティブを与えていることが求められます。
そのため、ガバナンスの取り組みを進めるためには、環境課題に取り組む意義や、外部からの現在・将来の圧力を取締役が理解し、企業の重要事項に環境課題への対応を組み込むことが重要です。
環境負荷低減のための目標設定
環境負荷低減のための目標は、地域のリスクや事業リスク低減に向けた指標(GHG排出量や取水量、生態系の保護)としきい値を適切に設定することが重要です。
具体的には、各質問書において以下の表に整理した目標を設定することが求められます。
表2. 求められる目標の内容
質問書 | 対象 | 種類 | 期間 | 目標のしきい値 | 進捗 |
|---|---|---|---|---|---|
気候変動 | GHG | 総量/ | 短期および | 1.5℃水準 | 進捗達成で得点 |
水セキュリティ | 水量、水質、水衛生すべて | 総量/ | 短期~ | なし(※) | |
フォレスト | 第三者認証/ | 割合/ | 短期~ | 以下のいずれかに関連
(現状維持の目標は不可) |
「CDP questionnaires 2023 General」をもとに当社作成
目標設定のためには、まず目標の対象となるGHGや水量、トレーサビリティ状況などを評価した上で、実現可能な目標を設定していくことが重要です。また、水の目標については、SBTN(Science Based Targets for Nature)などのガイドラインで記載されているように、今後、流域の状況を加味した上で目標を設定する可能性があります。
詳しくは、「ドラフト版ガイダンスに基づいたSBTs for Natureの解説」をご覧ください。
バリューチェーンへのエンゲージメント
エンゲージメントでは、サプライヤーや顧客に対して、バリューチェーン全体の環境負荷を軽減するようにインセンティブの付与や協働などの取り組みを行うことが重要です。以下の表に示すエンゲージメントの対象割合や契約内容、エンゲージメントの内容が求められます。
表3. 求められるエンゲージメントの内容
質問書 | 対象 | サプライヤー契約 | エンゲージメント内容 |
|---|---|---|---|
気候変動 |
|
| サプライヤーのみ該当(顧客などの取り組みは自由)
|
水セキュリティ |
|
| 自由(例:水関連リスクの定期評価実施、取水量削減目標の策定・モニタリングなど) |
フォレスト |
| なし(トレーサビリティの確保およびサプライヤーの法令順守の確認は必要) |
|
「CDP questionnaires 2023 General」をもとに当社作成
※1 顧客とその他パートナーは任意
※2 流況や水量の影響、水質の依存度等で評価
※3 エンゲージメントによる有益な成果と成果の評価指標が必要
エンゲージメントを進めるためには、アンケートやこれまでの関係性をもとに、エンゲージメントが可能なサプライヤーなどを選定し、対話を通してエンゲージメントの内容を決定し、随時対象を拡大させていくことが重要です。
気候変動
バリューチェーン全体のGHG排出量算定
GHG排出量の算定では、GHGプロトコルという国際的なガイダンスに基づいて、バリューチェーン全体のGHG排出量(Scope1,2,3)を算定する必要があり、報告年において前年度より削減していることや除外がないことが求められます。GHG排出量算定にあたっては、算定の目的と計算方法を確認したうえで、企業の活動量データと、それに一致する排出係数を収集して計算することが重要です。
また、算定結果は第三者検証機関によって認証されていることが非常に重要視されるため、第三者検証に備えて算定方法や社内体制がわかるように資料を整理しておく必要があります。
シナリオ分析
気候変動に関するスクと機会を評価するには、シナリオ分析が重要です。シナリオには以下の2種類があります。
- 地球温暖化や気候変動が進行した場合の「物理的シナリオ」
- 気候変動に関する長期的な政策動向による事業環境が変化した場合の「移行シナリオ」
シナリオ分析では以下のことが求められます。
- 事業活動全体を対象に実施する
- 1.5℃の移行シナリオと3.1℃以上の物理シナリオを使用する
- シナリオ分析結果を参考に適切な気候移行計画を策定する
表4. 求められるシナリオの例
シナリオ | 種類 | 概要 |
|---|---|---|
移行シナリオ | IEA NZE 2050 | 2050年までにエネルギー部門がネットゼロのエネルギーシステムに移行するためのロードマップを示したシナリオ |
BNEF NEO | 2050年までの世界の電力セクターの長期経済分析に焦点を当てたシナリオ | |
IRENA | 手が届く価格で持続可能なエネルギーの未来を確保するために、国や地域、世界が再生可能エネルギーを拡大する可能性を判断したシナリオ | |
物理シナリオ | RCP 6.0 | 2100年移行の放射強制力を約6.0W/m2で安定化させるシナリオ |
RCP 7.0 | ベースラインの結果であり、将来想定している排出量の範囲の中位から上位にあたり、追加的な気候政策をしない場合に生じる将来の温暖上昇シナリオ | |
RCP 8.5 | 排出量においてIPCCの最上位の経路で、2100年までに放射強制力が8.5W/m2以上となり、その後しばらく上昇し続けるシナリオ |
「CDP questionnaires 2023 General」をもとに当社作成
水セキュリティ
水関連情報(取排水量、排水水質)の収集
水関連情報(取排水量、排水水質)の収集では、以下の表に示す情報を収集する必要があります。測定比率が100%である、総取水量および水ストレス地域の取水量が前年度に比べて等しい、もしくは少ないことが求められます。
表5. 水関連情報一覧
水関連情報 | 概要 |
|---|---|
取水-総取水量 | 全ての取水量合計 |
取水-水源別取水量 | 淡水、汽水地表水/海水、第三者水源、地下水ごとの取水量 |
取水の質 | 原水の水質 |
排水-総取水量 | すべての排水量合計 |
排水-放流先別排出量 | 淡水、汽水地表水/海水、第三者水源、地下水ごとの排水量 |
排水-処理方法別排出量 | 環境に戻す前に適用される処理方法(一次/二次/三次処理の種類など)ごとの排水量 |
排水の質-標準的排水基準別 | 科学的酸素要求量(COD)/生物学的酸素要求量(BOD)/総浮遊物質(TSS)などの排水水質 |
排水の質-水への排出(硝酸塩、リン酸塩、殺虫剤、その他の優先有害物質) | 硝酸塩や農薬などの固体・液体・ガス状の汚染物質/汚染物質の排水水質 |
排水の質-温度 | 排水温度 |
水消費量-総消費量 | 取水量から排水量を引いた量 |
リサイクル水/再利用水 | 水と排水(処理済み/未処理)が組織の境界から排出される前に複数回使用される量 |
適正に機能し安全に管理された上下水道・衛生(WASH)サービスを全従業員に提供 | 基準に準拠した水源から入手できる全ての労働者への飲料水の供給、および排泄物がその場で安全に処分されるか輸送および処理される衛生施設がある割合 |
「CDP questionnaires 2023 General」をもとに当社作成
そのため、水関連情報の収集を進めるにあたり、測定できていない項目や拠点を整理し、測定方法を確認したうえで実施することが重要です。また、測定後は、前年度に比べて取水量が増加しないための対策も必要となります。
水リスクの特定
リスクの特定では、直接操業とサプライヤーを対象に、拠点が立地する流域のリスク(水量、水質、水害など)と事業への影響度(取水量、排水水質、売上など)を掛け合わせて、そのリスクの潜在的な影響額の特定と対策を行う方法があり、以下に示す内容を踏まえていることが求められます。
- 直接操業とサプライヤーの全てを対象に評価している
- 3年以上先のリスクを考慮している
- 自社固有のリスクを特定している
- リスクによる財務影響額を計算方法とともに示している
- リスクへの対応を説明している
- 対応にかかる費用を計算方法とともに説明している
フォレスト
森林関連情報の収集・推定
森林関連情報の収集・推定では、以下を収集および推定することが求められます。
- 直接操業の森林コモディティに関する売上割合と生産量/消費量のデータ(認証割合含む)
- 調達物のDCF量と非DCF量の内訳
- 法律管轄区域別の内訳
- 森林に与えた影響と対応
- 森林/転換の評価割合
そのため、森林関連情報の収集・推定を進めるにあたり、収集すべきデータを整理し、調達部門などの関連部署と協力し、調達物の森林関連情報がどこまで収集できるかを確認することが重要です。また、収集が難しいデータについては、文献調査などを行い、推定する必要があります。
トレーサビリティの向上
トレーサビリティの向上では、調達している森林コモディティがどこで生産されているかを把握することが重要であり、州や地方自治体、加工場、農場のいずれかでトレーサビリティが取れていることが求められます。現状の調達物のトレーサビリティ状況を確認し、調達先とのエンゲージメント実施や、認証を所得している製品の購入切り替えなどを行う必要があります。
第三者認証の採用
第三者認証の採用では、調達している森林コモディティが以下の表にあるFSCやRSPO、RTRSなどの認証を受けていることが重要であり、調達物の90%以上が第三者認証を受けていること、使用される加工・流通過程管理モデルがアイデンティティ・プリザーブドもしくはセグリゲーションであることが求められます。
第三者認証の採用を進めるにあたり、目的に合った第三者認証を選択することが重要です。
表6. 森林に関する第三者認証の例
森林コモディティ | 認証 |
|---|---|
木材 |
|
パーム油 |
|
畜牛品 |
|
大豆 |
|
「CDP questionnaires 2023 General」をもとに当社作成
まとめ
- 環境課題の解決に向けて、CDPなどの資料を確認し、自社の現状を把握したうえで、必要な取り組みを実施していくことが重要である
- CDPの資料などを活用して、社会から求められる取り組みについて確認する
- 自社の取り組みとのギャップを把握するために、自社の環境に関するデータや取り組み、方針について現状を整理する必要がある
- 求められる取り組みについて、不足している項目がある場合は、取り組みの計画を立てることが重要である
当社にはサステナビリティの専門家が多く在籍しており、初めてCDPの回答に取り組まれる企業さまへのアドバイスや、さらなるスコアアップに向けた取り組みのご支援を行っております。「スコアアップしたい」「初めて回答するので不安」などのお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。CDPのコンサルティングパートナーとして、役立つ情報をご提供します。
執筆者:霜山 竣、中野 晴康


