GX推進法とは? GX推進法の概要、日本の課題やGXリーグについて解説!

はじめに
GX推進法が2023年5月に成立し、脱炭素化に向けた取り組みが求められるようになりました。GXを推進したいと考える企業にとっては、GX推進法を理解することが重要です。

そこでこの記事では、GX推進法とは何か、GXが求められる背景について解説します。また、GXに向けた日本の課題と動向、対策、GXリーグについても説明していきますので、ぜひ参考にしてください。

GX推進法とは?

 

GX推進法とは、2023年5月に成立した、正式名称「脱炭素成長型経済構造への円滑な移行の推進に関する法律」のことです。脱炭素社会の実現と、産業競争力の強化、経済成長の実現を目的としています。GX推進法の主な2つのポイントについて解説します。

成長志向型カーボンプライシングの導入

 

GX推進法のポイントの1つ目は、成長志向型カーボンプライシングの導入です。これは、二酸化炭素の排出を抑制するために、事業者が排出する二酸化炭素を価格設定し、それにより企業行動の変革を促す仕組みです。

設定されるカーボンプライシングは2種類あります。1つは化石燃料の輸入事業者に対して、化石燃料に由来する二酸化炭素の排出量に応じて徴収する「化石燃料賦課金」です。

もう1つは、発電事業者に対して一部有償で二酸化炭素の排出枠を割り当て、量に応じた負担金を徴収する「排出量取引」です。

GX経済移行債の発行

 

GX推進法のポイントの2つ目は、GX経済移行債の発行です。GX経済移行債は国債の一種であり、用途は脱炭素事業に限定されています。投資家や国民にGX経済移行債を購入してもらい、GX推進のための補助金の財源に充当されます。

GX経済移行債の発行は20兆円規模とされており、カーボンプライシングから得た収入をもとに返済される仕組みです。

 

GXが求められる背景

 

化石エネルギーを中心とした社会や産業の構造を、クリーンエネルギーを中心としたものに転換しようとするGXに注目が集まっています。GX推進法が成立したのには、世界および日本の動向が大きく関係していることを理解しておきましょう。GXが求められる背景について解説します。

地球温暖化問題の深刻化

 

地球温暖化問題の深刻化に伴い、世界的に温室効果ガスの排出量削減、脱炭素、クリーンエネルギーへの転換を目指す取り組みが進められています。

2015年の国連気候変動枠組み条約締約国会議(COP21)で採択された「パリ協定」においては、2020年以降の温室効果ガス削減に関して、平均気温上昇の「2度目標(努力目標1.5度以内)」が掲げられました。この協定を大きな契機として、GXが求められるようになりました。

2050年カーボンニュートラル宣言

 

世界的な脱炭素の流れに呼応して、国内でも温室効果ガスの排出量削減が目指されています。2020年には、「2050年カーボンニュートラル」を目指すことが政府によって宣言されました。

カーボンニュートラルとは、温室効果ガスの排出を全体としてゼロとするというものであり、達成されれば、脱炭素社会の実現につながるものです。

2050年カーボンニュートラル宣言を受けて、国内ではGXに向けた取り組みが重要視されています。

エネルギー供給の不安定化

 

近年、戦争などの世界情勢の影響により、エネルギー供給の不安定化が進んでいます。特に日本の場合は、多くを輸入化石燃料に頼っている社会・産業構造となっているため、安定的で安価なエネルギーの確保の必要性が高まっています。

GXは、社会・産業構造をクリーンエネルギーの中心としたものに転換しようとする取り組みです。そのため、GXの推進は、再生可能エネルギーや水素エネルギーの利用促進につながり、結果としてエネルギーの安定供給をもたらすことも期待されています。

脱炭素経営志向の高まり

 

投資家による脱炭素経営への関心が高まってきたことを受けて、企業も脱炭素経営にシフトしはじめています。

また、消費者意識の高まりによって、環境に配慮した商品やサービスが選ばれる傾向があります。

 

(出典)
朝日新聞SDGs ACTION! | パリ協定とは?決定した内容を、要点を絞ってわかりやすく解説

GXに向けた日本の課題とGXリーグ

 

世界的にもGXが目指されているなかで、GXに向けた日本の課題とはどのようなものなのかについて解説します。また、日本の動向として、企業群がGXを牽引する枠組み「GXリーグ」についても紹介します。

GXに向けた日本の課題

 

GXに向けた日本の主な課題は、以下の3つです。

 

  • 導入時期が遅い:GX推進法が成立したのは2023年5月ですが、カーボンプライシングが実際に導入されるのは2028年、排出量取引が始まるのは2033年からです。すでに導入されている国も多いなかで、パリ協定の目標達成をするのは導入時期が遅いといえます。
  • 取引制度の公平性がない:GX推進法における排出量取引制度は、2033年までは法的強制力がなく、企業の自主性に任せられています。そのため、公平性も欠けています。
  • 炭素価格が低い:GX推進法における、企業に負担を求める金額「炭素価格」は上限が設定されており、国際的な水準(2030年時点で1トン当たり130ドル)に比べて、とても低いレベルにとどまることが懸念されています。

GXリーグとは

 

経済産業省が始めた「GXリーグ」とは、GXに取り組む企業、行政、学術機関、金融機関などが一体となり、経済社会システムの変革、新しい市場の創出などのために協働する場のことです。

カーボンニュートラルの実現を目指す取り組みとして2023年より活動を開始し、参画企業が増加してきています。

 

(出典)
GXリーグ公式WEBサイト | GXリーグとは
WWFジャパン | GX関連法に残る問題点と必要な改善策
公益財団法人 森林文化協会 | 地球沸騰化の時代に日本のGX(グリーントランスフォーメーション)の課題を考える

 

GX実現に向けたカーボンニュートラルの取り組み

 

今後、GXを実現させていくためには、どのような対策を取るべきなのでしょうか。ここではエネルギーの安定供給の観点から、省エネの推進、再生可能エネルギーの拡大、水素エネルギーの利用促進、CO2の貯留・利用技術の確立という4点について解説します。

省エネの推進

 

脱炭素社会の実現のためには、省エネを推進し、CO2排出量を削減することが重要です。断熱構造の施工、空調の最適化、ゼロエネルギーハウスなど、技術革新・普及を進めることで、省エネをより推進することができます。

再生可能エネルギーの拡大

 

太陽光発電や風力発電などの再生可能エネルギーを拡大させることでも、脱炭素社会の実現に近づけることができます。太陽光発電の促進のためには、送電施設の整備、太陽光パネルや蓄電池設置に対する補助などが必要です。

また、風力発電の促進に向けて、港湾における「着床式洋上風力発電」や、沖に浮かべた風車を利用する「浮体式洋上風力発電」などに期待が集まっています。

水素エネルギーの利用促進

 

燃焼させてもCO2を排出しない水素は、脱炭素社会実現のためのエネルギー源として注目を集めています。

特に、製鉄業界においては多大な熱が必要とされるため、コークスの一部を水素に置き換えることで、CO2排出量を削減可能です。今後の技術革新により、鉄鉱石を水素100%で還元する「ゼロ・カーボンスチール」も実現される可能性があります。

CO2の貯留・利用技術の確立

 

近年、CO2を分離・回収し、地中や海底に貯留する技術「CCS(Carbon dioxide Capture and Storage)」が開発されています。また、回収したCO2を貯留だけではなく利用もしようとする技術「CCUS(Carbon dioxide Capture, Utilization and Storage)」の研究も進んでいます。これらの技術が実現すれば、大気中のCO2濃度の低減が可能となると考えられます。

 

さいごに

 

GX推進法は、脱炭素社会の実現と、産業競争力の強化、経済成長の実現を目的としています。成長志向型カーボンプライシングの導入と、GX経済移行債の発行を主な柱とした法律です。

GXに向けた日本の主な課題は、導入時期が遅い、取引制度の公平性がない、炭素価格が低いなどです。今後は、省エネの推進、再生可能エネルギーの拡大、水素エネルギーの利用促進、CO2の貯留・利用技術の確立などを通じて、GXを実現させていくことが求められています。

 

執筆者:霜山竣、中野晴康

メルマガ登録

ご登録いただけるとサステナビリティに関する最新の情報をお届けします

ページのトップへ戻る