<エネルギー特集⑤>グリーン電力証書の現場に迫る第2回/全2回

はじめに
これまで「環境価値」や「非化石証書」について、解説してきました。
第5回では、官民連携によるグリーン電力証書事業で環境価値を提供している、鶴岡市との取り組みをインタビュー形式でご紹介します。
実際の声から、環境価値を地産地消する選択肢についてご検討ください。

グリーン電力証書事業に取り組むきっかけ

喜多川)最初に、グリーン電力証書事業に取り組むことになったきっかけについてお伺いさせてください。

 

阿部(真))八千代エンジニヤリングさんが新たなごみ焼却施設建設工事の施工監理業務を請け負っており、それが縁でグリーン電力証書事業の提案を受け、初めて知りました。初期投資がかからず※1、RE100などを目指す企業がグリーン電力を取り引きするシステムがあり、それを利用して鶴岡市が収入を得ることに魅力を感じました。

 

喜多川)鶴岡市さんが、グリーン電力証書事業を導入された決め手は何でしたか?

 

阿部(真))私たちは環境に配慮した金融へのシフトを感じており、RE100などの肩書を持つ民間企業は、銀行からの融資条件などで優遇されると聞いています。廃棄物発電でのグリーン電力証書という新しい考え方は、当時初めての取り組み※2であり、大きく普及させたいと考えました。八千代エンジニヤリングさんは鶴岡市の整備事業で実績があり、同社が実施するなら間違いがないと思い決めました。

 

 

喜多川)たしかに当時は前例がなく、鶴岡市さんが初の取り組みでした。グリーン電力証書事業の推進 に対して、庁内で反対する意見はありましたか?

 

阿部(真))当初は、八千代エンジニヤリングさんとデジタルグリッド(当時の証書発行事業者)さんの共同提案で採択され、鶴岡市はデジタルグリッドさんと面識がなかったことが不安でしたが、審査機関である日本品質保証機構からお墨付きをもらっていることや、共同提案者が八千代エンジニヤリングさんで鶴岡市の整備事業で実績があると説明して了解を得た記憶があります。

グリーン電力証書事業による地域脱炭素

 

喜多川)グリーン電力証書事業により、清掃工場の自家消費分の環境価値を創出することになるので、省エネ法の報告対応が必要になります。このことで悩んでいる自治体も多いのですが、鶴岡市さんは何か問題などはありましたか?

 

阿部(真))省エネ法の報告など は「環境課」で担当していますが、令和5年度分報告について、問題がなく進んでいると聞いています。

 

阿部(邦))特に問題なく対応できていますよ。

 

 

喜多川)あまり気にすることなく対応できているのですね。清掃工場のグリーン電力証書化については、市民の方から反応などはありましたか?

 

阿部(真))鶴岡市で年1回開催される「環境フェアつるおか」の会場内で市民に説明をしています。正直、わかりにくいという意見がある一方で、地球に優しいエネルギーを扱うことに一定の理解を得ているとも感じています。環境フェアの運営が、グリーン電力証書付きの電力で賄われていることもプラスの要因となっていると思います。

 

喜多川)ありがとうございます。わかりにくい、そうなのですね。当社も「環境フェアつるおか」には毎年ブースを出させていただいていますので、もっと訴求効果を工夫しないといけないですね。

 

喜多川)他の自治体や清掃組合などから、この事業に対する問合せなどはありましたか?

 

阿部(真))はい。八千代エンジニヤリングさんの第1号施設ということもあり、全国の市町村や清掃組合などから、問い合わせがありました。もともと近隣の自治体でのつながりはあったのですが、遠方の自治体からも問い合わせをいただくようになりました。

 

喜多川)グリーン電力証書事業で得られた収入はどのように使われているのですか?

 

阿部(真))現時点では、つるおかエコファイア(鶴岡市ごみ焼却施設)の運営管理費に充てています。

 

喜多川)再エネ設備である焼却施設もメンテナンスなどでいろいろと コストがかかりますよね。実際の使い方のほかに、将来的にはこういった使い方もあるのではという検討はされていますか?

 

阿部(真))再エネを普及させるための資金(補助金)などにして活用することを検討したいとは考えていますね。

 

喜多川)すばらしいですね。再エネが再エネを生むのは訴追性として大事な要件ですが、そういった取り組みはできそうでしょうか?

 

阿部(真))バイオマス比率が50%を下回るような低い場合は認証されないため、収入が安定しないことが、ネックとなっています。

 

喜多川)バイオマス比率の安定性ですね。これはどこの自治体でも同じことがいえ、安定的に50%を確実に超えている自治体は多くないように思います。当社の認識では鶴岡市さんのバイオマス比率は高い方に分類すると感じています。

グリーン電力証書事業を検討する他の自治体へ一言

 

喜多川)グリーン電力証書事業について、悩んでいる自治体・清掃工場も少なくありません  。先進事例として取り組んだメリットをお聞かせください。

 

阿部(真))メリットと言っていいかわかりませんが、市の事務担当として、月に1回のバイオマス比率の報告のみで収入を得られるなど、想定より仕事量が少ないですね※3

 

喜多川)全国の自治体・清掃工場でご検討中の方へ、アドバイスをお願いいたします。

 

阿部(真))この事業は、ごみ焼却施設で創出した「グリーン電力証書」を地元企業に優先して販売し、市内企業の脱炭素化を推進することで、収益をえることができます。自治体として環境保護に貢献し、環境対策のPRにつながるのではないかと思いますので、ご検討されてはどうかと思いますね。

 

喜多川)グリーン電力証書事業を通じて、当社へリクエストしたいことはございますか?

 

阿部(真))鶴岡市内の企業を優先に販売していただければありがたいと思います。

グリーン電力証書を企業へ供給する

 

喜多川)市内企業への販売ということで話題が出ました。鶴岡市さんとして、グリーン電力証書の販売先など、どのように使われていきたいか、など想定するお考えはありますか?

 

阿部(邦))地産地消として、地元企業が活用していただければと思います。現時点ではどれぐらい販売されていますか?

 

喜多川)そうですね、「環境フェアつるおか」の他に、地域内企業にもご購入いただいています。まだ余剰もある状態ですので、これからも鶴岡市内の企業の皆さんにどんどんご購入いただいたいところです。

 

喜多川)今後のグリーン電力証書の提供にもつながるところですが、鶴岡市内の企業との脱炭素化について、連携していること、今後想定していることがあればお聞かせください。

 

阿部(邦))先ほども話題に出ました「環境フェアつるおか」に参加いただき、企業はもとより市民への環境教育とともに、意識の共有をしながら、官民連携を図っていきたいと考えています。

 

喜多川)環境教育という点において、市民の皆さまにも認知を広げていくには、どのようなことができますでしょうか。

 

阿部(邦))環境教育ということであれば、本市としては、やはり「環境フェアつるおか」が一番に挙げられます。

その他にも「環境講座」や「環境セミナー」なども実施しています。

 

阿部(真))市民が集まるという点では「つるおか大産業まつり」などもありますね。数万人が訪れ、とても活気があります。そういうところで伝えていくこともできそうです。

 

喜多川)まだまだ市内イベントでの普及も考えられますね。それでは最後に、地産地消に向けて、地元 の企業の皆さま     へ、ぜひメッセージをお願いいたします。

 

阿部(邦))鶴岡市は、環境省が公表している「鶴岡市地域経済循環分析」によると200 億円を超えるエネルギー代金が市域外へ流出しています。

省エネや再エネの導入を進め、家庭では、豊かな質の高い生活を目指すと共に、地元企業は地元で生み出された環境価値の地産地消も進めていただければと思います。

 

喜多川)ありがとうございました。

 

阿部(真))ありがとうございました。

 

阿部(邦))ありがとうございました。鶴岡市内の企業の皆さまに購入いただけることをお待ちしています。

本市の「ごみ発電」が生んだ「グリーン電力証書」について、地元の企業の脱炭素にご活用いただくことで「エネルギーの地産地消」にもなります。

本市も環境価値の活用について今後も周知を行っていきたいと思います。

 

 

※1 グリーン電力証書事業の実施に際しては、設備設置により初期投資が発生する場合があります。清掃工場に寄って異なりますので、ご不明な場合は当社担当へお問い合わせください。

※2 鶴岡市様と検討時は前例がありませんでしたが、事業開始直前に愛知県豊田市が国内第1号案件として事業を開始されました。

※3 鶴岡市様は電力量計の数値確認をWEB認証で実施しているため、一般的な作業よりも手作業が少ない方法を採用されています。

 

 

インタビューイー:鶴岡市市民部環境課 課長補佐 阿部 邦彦 氏

         鶴岡市市民部廃棄物対策課 主査 阿部 真 氏

インタビュアー:当社エネルギー課 コンサルタント 喜多川 権士

(所属・役職は2024年11月時点)

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