AWS(Alliance for Water Stewardship)とは? 水資源管理の世界基準を解説

catch-img

気候変動の影響により、水不足や洪水といった「水リスク」が世界各地で深刻化しています。こうしたリスクは、もはや環境問題に留まらず、企業の事業継続や投資評価を左右する経営課題として認識されるようになりました。そのような状況で、グローバル企業や機関投資家から注目を集めているのが、「Alliance for Water Stewardship(AWS)」が提唱する水資源管理の国際フレームワークと認証制度です。

「AWSとは?」
「なぜ今、多くの企業がAWSに取り組んでいるのか?」

そうした疑問をお持ちの方に向けて、この記事ではAWSの基本や国内外の事例を紹介します。水リスク対応をこれから検討する方にも、すでに情報開示や認証取得を視野に入れている方にも、実務の判断材料となる内容です。

AWS(Alliance for Water Stewardship)とは

AWS(Alliance for Water Stewardship)とは、水資源の持続可能な利用および健全な流域環境の形成をグローバルに推進する非営利団体です。2010年、世界自然保護基金(WWF)などのNGOと企業が共同で設立しました。流域における持続的な水資源管理を実践するための指針である「AWSスタンダード」を提供しています。

AWSは、「人々、文化、ビジネス、自然がともに繁栄する水安全保障が確保された世界の実現」というビジョンを掲げています。その達成に向け、「淡水の社会的・文化的・環境的・経済的価値を認識し確保する、信頼できる水管理における世界的および地域的なリーダーシップを喚起・育成すること」がミッションです。

AWSの特徴は、水リスクを「工場や拠点のなかだけの問題」ととらえず、流域全体の健全性と持続性に着目していることです。企業の水資源管理システムを評価する「AWS認証」制度では、地域のステークホルダーとの連携を特に重視しています。

AWS(Alliance for Water Stewardship)の特徴は流域全体の健全性と持続性に着目していること

AWSスタンダードとは

AWSは、効果的な水資源管理を実践するためのフレームワーク「AWSスタンダード」を提供しています。AWSスタンダードには、拠点が取り組むべき5つのステップが用意されています。

  1. 情報の収集と理解
  2. コミットメントと計画策定
  3. 実施
  4. 評価
  5. コミュニケーションと情報開示

AWSスタンダードを実装する目的は、5つの重要な成果を達成することです。

  1. 水資源の適切な管理
  2. 持続可能な水収支
  3. 良好な水質
  4. 重要な水関連地域の保全
  5. すべての人々に安全な水、衛生、衛生習慣を

AWSスタンダードは、5つのステップを通じて、自社の拠点における水利用を最適化するだけでなく、流域全体における水資源の健全化にも貢献できる仕組みです。また、他の企業、行政、地域社会との連携を促進することができます。取り組みが一定の基準を満たせば、AWS認証を取得することも可能です。

AWS(Alliance for Water Stewardship)は、効果的な水資源管理を実践するためのフレームワーク「AWSスタンダード」を提供している

AWSが注目される背景

AWSが日本で注目される背景には、気候変動が原因とみられる水リスクの顕在化が挙げられます。記録的な豪雨による浸水や、渇水による取水不足は、事業の継続に甚大な影響を及ぼします。

投資の観点からも、水リスク管理は重要です。長期的なリターンを重視する機関投資家は特に、水リスクへの対応力を、事業の持続可能性や信頼性の指標の1つとみなしています。安定した事業活動にも、外部資金の獲得にも、水リスク管理が必要なのです。

ただし、水リスクへの対応が難しいのは、地域によって性質や深刻度が大きく異なることです。降水量が少ない地域では渇水による取水制限が懸念される一方、降水量の多い地域では河川の氾濫や浸水のリスクが高いといえます。

企業には従来の「工場や拠点内の水管理」を超えた、地域全体を俯瞰する「流域思考」への転換が求められています。水は流域共有の財産であり、自社の対策だけでは流域全体の水の枯渇や汚染を防げないからです。

そのため企業は、事業活動を展開している「流域」の特性を理解し、ステークホルダーと対話しながら対策を講じなければなりません。国際規格であるAWSスタンダードは、こうした複雑な水リスクに対し、客観的な信頼性と透明性をもって取り組むための世界共通の指針となっています。

流域について、詳しくは「流域とは? 水リスクを考える基礎知識を解説!」をご覧ください。

AWS認証の取得事例

グローバル企業は、水に関する信頼性の高い認証制度として、AWS認証の取得を進めています。2026年1月時点で、AWS認証を取得した拠点は世界で394カ所。特に水関連リスクに直面しやすい業種や地域での取得が進んでいます。

2026年1月時点のセクター別AWS認証取得箇所数。Food & Beverage Productionが131件と最も多い

2026年1月時点のセクター別AWS認証取得箇所数
Alliance for Water Stewardship|Certified sitesをもとに当社作成

2026年1月時点のAWS認証取得箇所分布

2026年1月時点のAWS認証取得箇所分布 左)全世界 右)日本
Alliance for Water Stewardship|Certified sitesより引用

【AWS認証を取得した海外企業の例】

  • ネスレ
  • グーグル
  • アップル
  • ユニリーバ
  • ジョンソン・エンド・ジョンソン
  • TSMC(台湾セミコンダクター・マニュファクチャリング・カンパニー)

日本企業におけるAWS認証の取得例は少ないものの、関心を持つ企業は増えており、国内でもAWS認証を取得する企業は増えていくと考えられます。

【AWS認証を取得した日本企業の例】

  • サントリーホールディングス株式会社
  • コカ・コーラボトラーズジャパン株式会社
  • 日本コカ・コーラ株式会社

当社のコンサルタントは、AWSのProfessional Specialistとして認定を受けており、深い専門知識をもって水リスク対応をサポートします。AWS認証の取得支援やAWSスタンダードに沿った水資源管理システムの構築支援も行っておりますので、水資源管理やAWSに関心のある方はお気軽にご連絡ください。

>>AWS認証取得支援の資料をダウンロードする

AWSの日本版「ジャパン・ウォータースチュワードシップ」

2025年3月、AWSの日本版といえる「ジャパン・ウォータースチュワードシップ(JWS)」が発足しました。日本におけるAWSの活動を強化するためのワーキンググループです。主な活動は以下のとおりです。

  • 日本語による研修プログラム提供
  • 流域における企業間のネットワーク構築、協同活動促進
  • 行政機関との協力強化

JWSは、以下のメンバーで構成されています(五十音順)。

  • MS&ADインシュアランス グループ ホールディングス株式会社
  • 栗田工業株式会社
  • サントリーホールディングス株式会社
  • 日本コカ・コーラ株式会社
  • 八千代エンジニヤリング株式会社(当社)

当社はJWSの一員として、より多くの日本企業が水資源管理に取り組めるよう、活動を強化してまいります。

まとめ

安定して事業を継続するには、水資源の保全と、流域におけるステークホルダーとの関係構築が欠かせません。AWSおよびJWSは、そうした課題に取り組むための実践的な指針を提供しています。

当社では、サステナビリティの専門知識と豊富な実績をもとに、水リスク管理の支援・コンサルティングを行っています。

「水リスク管理を何から始めればいいかわからない」
「AWS認証に興味がある」

という方は、お気軽にご相談ください。

>>AWS認証取得支援の資料をダウンロードする

執筆者:小西 拓海、加藤 ひかる

関連記事

ニュースレター登録

人気記事ランキング

タグ一覧