Alliance for Water Stewardship
-責任ある水資源管理-
Alliance for Water Stewardship(AWS)は、2010年に世界自然保護基金(WWF)やThe Nature Conservancy(TNC)、自然資本連合(NCC)等のNGOと主要な企業や学術機関が共同で設立した、水のサステナビリティを推進するための機関です。また、工場単位での集水域(catchment)※1の持続的な水管理に対する認証制度も運営しています。
水は地域で量や質、利用状況などが異なることから、普遍的な基準を設けることが極めて困難です。このため、集水域ごとに関連するステークホルダーが協力し、責任ある水資源管理を行う必要があります。AWS Standardには、持続的に責任ある水資源管理を行う上で理解しておくべき視点が、5つのステップで示されています。また、ステップには一連の基準と指標が定められていることから、集水域に着目した拠点の水リスク管理行う際には、AWSを参考とすることができます。
※1 集水域(catchment)
AWSでは、Water Stewardshipの概念を理解するための基本単位として集水域(catchment)が使われています。集水域とは、降った雨が集まる範囲のことです。流域(watershed, basin)とも言われますが、AWS Standardでは集水域(catchment)を使用しています。
なぜ工場の責任のある水資源管理が必要か
企業には事業を行う中で、その企業や工場ごとに水利用の違いやそれぞれ異なる様々な課題があります。例えば、工場で井戸から地下水を取水して水を利用しているのか、または工業用水を利水しているのかで課題や管理方法は異なります。また、排水、風水害対策、地域との連携といった工場ごとの課題があると思います。
世界を見ても人口増加と経済拡大による水需要の増加、地球規模の気候変動は、水資源を圧迫しています。世界で人口が増加し、水需要が高まる一方で、日本では徐々に人口が減少していくと推計されています。
日本では水道を行政が管理していることが多いですが、人口の減少により、水道事業の収入は減少し、行政による管理が限界となり、今後今までのような水道の管理ができなくなる可能性があります。水道料金の値上げや管理サービス内容も変化する可能性があります。
すでに水リスクは顕在化してきており、海外では渇水が頻発し、水害は国内外で発生しています。国内での行政による水道管理の限界もすでに生じ始めており、水道民営化の議論がなされたり、高度経済成長期に整備された水道関連施設の老朽化が問題となったりしています。
すでに水リスクが顕在化し始めている中で、工場自体の水課題と外部環境によって、水リスクの影響は継続および拡大するため、工場が主体となって水リスクに対応できる体制を整えておくことが大切です。
水管理のステップと各ステップの基準と指標
AWS Standardは、以下の5つのステップを中心に構築されています。
1.水関連のデータを収集して理解する【GATHER & UNDERSTAND】
2.水資源管理に取り組み、水資源管理計画を作成する【COMMIT & PLAN】
3.計画を実行する【IMPLEMENT】
4.パフォーマンスを評価する【EVALUATE】
5.利害関関係者へ進捗状況を伝達および開示する【COMMUNICATE & DISCLOSE】
各ステップには、一連の基準と指標があり、手順と基準に従って水資源管理を行うことで、以下の5つの領域でパフォーマンスを向上させることができます。
1.改善された水ガバナンス【GOOD WATER GOVERNANCE】
2.持続可能な水収支【SUSTAINABLE WATER BALANCE】
3.良好な水質【GOOD WATER QUALITY STATUS】
4.重要な水関連地域を健全な状態に【IMPORTANT WATER-RELATE AREAS】
5.全ての人の水へのアクセス、衛生、衛生(WASH)【SAFE WATER, SANITATION AND HYGIENE FOR ALL(WASH)】
AWSのビジョンとミッション
Water Stewardshipとは責任ある水資源管理の基本的概念です。水資源は、常に循環する資源であり、集水域の人々やそこにいる生物全ての共有資源です。そのため、水資源を持続的に活用するためには、集水域や関連する地域の水資源の特性を理解し、水資源管理を行う必要があります。
AWSは人類、文化、ビジネスそして自然が、安全な水の恩恵を受けて現在から将来にわたって繁栄することのできる世界の実現を目指しています。ミッションとして、Water Stewardshipに基づき、淡水の社会的・文化的・環境的・経済的価値の認識、保全、グローバルやローカルのリーダーシップの発揮・育成を掲げています。AWSの認証は基本的に拠点(工場)ごとの取得となります。
AWSの認証は基本的に拠点(工場)ごとの取得となります。各基準の指標によって達成状況を評価され、認証を受けることができます。日本国内では、サントリーの奥大山工場と九州熊本工場がAWSの認証を受けており、サントリーは国内唯一のAWSメンバーシップ企業でもあります。現在、海外を中心にAWS認証取得の動きが加速しており、企業の目標として工場でのAWS認証取得を掲げている企業も増えています。今後認証を受ける企業拠点は国内外で増えていくと考えられます。
AWSの重要性
水は地域で量や質、利用状況などが異なることから、普遍的な基準を設けることが極めて困難です。今後流集水域にAWSは、詳細な調査方法やリスク評価基準を示したものではありませんが、持続的にリスク管理を行う上で、理解しておくべき視点が示されています。着目した工場における水リスクへの調査・対応の際には、AWSを参考とすることができます。
工場がAWS認証を取得しなくとも、AWSの評価視点や要求事項は水の保全やスチュワードシップの推進の参考となる考え方です。責任ある水資源管理が企業と工場に求められており、AWSの基準や指標は水資源管理の考え方は今後絶対必要になるものです。
まとめ
1.水リスクに対応できる体制を工場が主体となって整えておくことが大切
2.AWSには、持続的にリスク管理を行う上で理解しておくべき視点が、5つのステップを中心に網羅的に定められている
3.今後集水域に着目した工場における水リスクへの調査・対応の際には、AWSの基準や指標は水資源管理の考え方が今後絶対必要になる
当社の水リスク支援についてもせひご覧ください。
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