企業が求められる流域視点での水目標:CBWT(Context-Based Water Targets)

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水関連目標の設定方法については、流域視点でのアプローチであるContext-Based Water Targetsの導入がWWFを含め社会的に推奨されており、ガイドである「Setting Site Water Targets Informed By Catchment Context: A Guide For Companies」が2019年に公表されています。

この記事では、CBWTを踏まえた水関連目標導入のメリットと今後の水リスクマネジメントへの活用について解説します。

なぜ「流域視点」が求められるのか

水は地域的な偏在性を有する資源です。これは、資源の状態が地域の気象や地形、地質により形成される流域内の水循環プロセスに寄るためであり、さらにそれを利用する需要側の状態は人口や産業状況、インフラ整備状況に依存するからです。

このため、同じ1リットルの取水であっても、流域の水資源に与えるインパクトは水資源が枯渇している地域と豊富にある地域では大きく異なります。このような観点から水リスクに対するマネジメントは流域視点での取組みが求められています。

ガイドでは以下のステップを踏まえて水関連目標を設定することを推奨しており、流域の水課題にフォーカスし、健全な状態をイメージした上で自社の貢献度を目標として設定することが基本的な考えとなっています。

STEP1:水課題の優先順位づけ STEP2:健全な流域状態の設定とギャップ分析 STEP3:拠点の水目標の設定

図1. Context-Based Water Targetsの設定ステップ
Setting Site Water Targets Informed By Catchment Context: A Guide For Companies」をもとに当社作成

Context-Based Water Targetsを導入するメリット

このガイドの中では、以下を水目標を設定するための重要な要素としています。

  1. 水の目標は、流域内の優先的な水の課題に対応すべきである
  2. 水の目標を検討するうえで、水課題とそれに対する拠点の影響、水課題が克服された望ましい状態を考慮すべきである
  3. 水の目標は、水リスクを低減すること、機会として活用されること、公共部門の優先事項に貢献することとして設定されるべきである

ここに示されるように、企業が流域視点での水目標を設定するためには、操業している流域や地域の水課題や公共政策などのローカルな情報が必要になってきます。この点がCBWTを設定していく上での難しさであり、企業のサステナビリティ部門がこれまで実施してきている温室効果ガス(GHG)排出量削減の目標設定(SBT)の考え方と大きく異なる部分です。

設定にはSBTよりもローカル情報が必要ですが、CBWTを導入するメリットも多くあります。

これまで、多くの企業では、Non-Contextual Water Targetsと言われる全社一律の目標設定が主流でした。この考えは、前述したGHG排出量削減目標の流れからだと考えますが、全社的に毎年数%の取水量削減や水使用効率の改善が多くの企業の目標として設定されていました。

このため、工場側では「水な豊富なこの地域でなぜ節水をしなければならないのか」「いつまで水を削減していかなければならないのか」「これ以上の節水は品質に影響が出る」などのフラストレーションを抱えていました。

CBWTでは、「流域内の優先的な水の課題に対応すべき」との考えがもとになっているため、水資源が豊富な地域では過度な節水の必要性から解放され、企業は本当に水資源が枯渇している地域にフォーカスできるため、対象とする拠点を限定することができます。

さらに、水リスクは、水資源リスクや水質リスク、洪水リスクなどがありますが、これまでは水をあまり使用しない事業セクターの企業も水資源に関する目標を設定していた(しなければならなかった)と感じます。「水の課題と課題に対する拠点の影響」という観点からは、事業が影響を及ぼしうる、または事業に影響を与えうる水課題に着目することが推奨されているため、より本質的な課題に向き合うことができます。

今後の水リスクマネジメント

これまで、多くの企業ではNon-Contextual Water Targetsの考えのもと、水利用効率を改善してきています。このため、企業のなかには、すでに限界まで効率化し、これ以上の節水が難しい拠点もあります。

拠点の操業は、安定的な生産と品質の確保が本質的な使命です。CBWTなどに代表される水リスクマネジメントの考えは、企業の取水をゼロにすることを目的にしているものではありません。プラスチックに対する規制がシングルユースの製品が対象となっているように、水に関しても品質を確保する上で水が必要不可欠なプロセスでの過度な節水は操業そのものを危険に晒す可能性があります。

このため、自拠点での水利用を分析し節水の限界を見極めたうえで、目標値を設定することが操業の安全上、大事な観点だと考えます。そのうえで、自拠点での対応が完了した場合には、地域協働に目標を転換していくことが期待されます。

流域内のステークホルダーと協働し、水課題の解決に貢献していくことは、CBWTの「公共部門の優先事項に貢献すること」の観点やウォーターシチューワードシップでの最終的なゴールとしても示されており、企業にとっても地域にとっても効果的な活動であると考えます。

まとめ

Context-Based Water Targetsの設定していく上での重要な観点を以下に示します。

  1. 操業している流域や地域の水に関する情報を収集し、流域の水課題を理解する
  2. 自社が対応すべき水リスクおよびその地域を特定する
  3. 拠点内の活動が完了した場合には、地域協働に目標を転換していく

執筆者:金子 祐

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