CDP水セキュリティの格付け向上を目指す意義

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近年、企業のサステナビリティ面に対する評価、つまりESG格付けが着目され始めています。ESG格付けは様々な格付け機関によって行われておりますが、特に環境分野で知名度の高いESG格付けの1つにCDPがあります。

CDPは、企業のサステナビリティ面を「気候変動」「水セキュリティ」「森林」に対する取組みから評価するものです。この記事では、CDP水セキュリティに焦点を当て、水リスクマネジメントや投資との関係性を紐解きながら、格付け向上を目指す意義についてお話しします。

CDP水セキュリティと水リスクマネジメントとの関係

CDP水セキュリティの格付け向上を目指す意義の一つに、本質的な水リスクマネジメント、つまりWater Stewardshipの実現が挙げられます。そもそも企業における水リスクマネジメントは、地域における水課題や自社への影響を把握し、リスクの高い課題に対し目標を設定したうえで、自社での対策とその進捗管理を行い、最終的にはステークホルダーとの協同やガバナンスへの働きかけを通して地域の水課題解決を目指すというステップで実施することが、Water Stewardshipと呼ばれる行動規範において推奨されています。

しかし、いざ水リスクマネジメントに取り組もうという段階になっても、何をどこまで取り組めば良いかわからないという方も多いのではないでしょうか。

一方で、CDP水セキュリティは質問書への回答を基に、企業が水リスクに対してどの程度マネジメントできているのかを、水の利用状況、水リスク評価、水関連の目標設定等の様々な観点(2020年の質問書は、W1からW10の10セクションで構成されている)から、「開示」「認識」「マネジメント」「リーダーシップ」の4つのレベルで評価・格付けするものであり、上記の行動規範に基づいて構築されています。そのため、企業はCDPへの回答とそのスコアを自社の水リスクマネジメントの診断書として活用できるのです。

各セクションでマネジメントやリーダーシップレベルの評価獲得、つまり格付け向上をめざして取組みを強化していけば、自ずとWater Stewardshipに則った本質的な水リスクマネジメントが推進できるとされています。

表1. 水リスクマネジメントフローとCDP水セキュリティ2020の質問との対応関係

水リスクマネジメントフロー

CDP水セキュリティの質問

  1. 地域における水課題の把握

W3.3、W3.3a~dなど

  1. 自社への影響の把握

W1.1、W1.2、W1.2b,d,h,i、W2.1、W2.1a、W4.1、W4.1a~cなど

  1. リスクの高い課題に対する目標設定

W8.1、W8.1a,bなど

  1. 自社での対策と進捗管理

W4.2、W8.1、W8.1a,bなど

  1. ステークホルダーとの協同やガバナンスへの働きかけ

W1.4、W1.4a~c、W3.3b,c、W6.5、W6.5aなど

水リスクと財務影響との関係

CDP水セキュリティの格付け向上を目指す意義は、投資との関連性からも見出すことができます。ESG投資が拡大する現在、投資家は環境・社会・ガバナンスに対してより優れた取組みを行っている企業、つまり、より持続可能な企業に投資の目を向けていくことが想定されます。これを判断する材料となるのがCDP等のESG格付けです。

事実、CDPの格付けは、主要な株式情報提供サービスに広く利用されており、投資家は直接的・間接的にCDPデータを活用して投資判断を行っています。これは、英国のシンクタンク“SustainAbility”によりCDPはESG格付けとして「質」も「有用性」も非常に高いと評価されていることにも裏付けされており、CDP格付けはESG投資に大きな影響を及ぼすと言えます。

見方を変えると、ESG格付けで低いスコアを獲得してしまうと、それだけ企業が投資の機会を失う可能性が高いことを意味します。CDP水セキュリティでは、年を追うごとにA評価を獲得する企業が増加しています(2016年24社、2018年31社、2020年106社)。つまり、格付け向上に向けて取組みを強化せず、結果として同業他社より格付けが大きく劣ってしまうことや、格付けが下落することは、投資家からの評価を落とすことに繋がりかねません。

CDP水セキュリティ単独の格付けと投資の関連性については未知な部分もありますが、ESG投資が拡大を見せる現在、企業投資の観点で見てもCDP水セキュリティの格付けを向上させることは重要であると言えます。

企業がCDP水セキュリティの格付け向上のためにすべきことは

では、どのようにCDP水セキュリティの格付けを向上させるのか。それは、先に述べたように、CDPへの回答とそのスコアを自社の水リスクマネジメントの診断書として活用することです。回答を分析し、得点が取れていない設問を把握することができれば、そこが水リスクマネジメントにおける弱点、つまり今後取組みを強化するべきポイントとなるのです。

CDP水セキュリティで高評価を得るために何が必要なのかを理解することは、本質的な水リスクマネジメントを推進するのに必要なことを理解することでもあり、投資家や社会が企業に求めていることを理解することでもあります。CDPの設問と自社の対応状況を分析し、これらを理解しようとするのは手間がかかるかもしれませんが、当社のようなCDPスコアリングパートナー(※)を上手く活用するなどして、CDPでの要求事項とこれからの自社の取組みを紐づけていくことが重要であると考えます。

※ CDPの質問書に対する各企業の回答をスコアリングする外部機関。当社は2020年から水セキュリティのスコアリングパートナーとして参画

まとめ

  1. CDP水セキュリティの格付け向上を目指して取組みを強化していくことは、Water Stewardshipに基づいた本質的な水リスクマネジメントにつながる
  2. CDP水セキュリティの格付けは、ESG投資を通して企業に大きな影響を与える可能性がある
  3. CDPへの回答を分析し、今後取組みを強化するべきポイントを把握することで、CDP水セキュリティの格付け向上を目指すことが可能

執筆者:佐藤 怜

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