CDPに初回答する方必見! 概要と質問書内容を解説

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各国の具体的な温室効果ガスの削減目標が示された1997年京都議定書から30年近くが経過し、世界の環境リスクへの意識は大きく変わりました。また、2006年に国際連合がESGを投資プロセスに組み入れる「責任投資原則」(PRI)を提唱したことをきっかけにESG投資が広まり、気候変動、水に関する安全、森林減少などの環境問題解決への取り組みが投資家から総合的に求められるようになっています。

こうした投資家や投資機関の要求に応えるために、CDPが運営する環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムが広く利用されています。この記事では、CDPの概要と質問書の内容についてご紹介します。

CDPとは

CDPは、イギリスの国際環境NGO組織であり、企業や自治体などが自らの環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営しています。2000年より世界中の上場企業などを対象に、「CDP質問書」による環境対策のランク付けを実施しており、世界の環境リスク意識を啓発・先導し、国や大企業を巻き込みながら世界的な環境意識を高める一役を担っています。

CDP質問書には、

  1. 気候変動
  2. 水セキュリティ
  3. フォレスト

の3種類があり、TCFDなどの気候変動や環境への対応に関するさまざまな枠組みに関連があります。これにより、投資機関や世界市場で求められる基準と自社の取り組みレベルのギャップを把握することができます。また、今後は「オーシャン(海洋)」の項目が追加される予定です。

CDP質問書は、毎年CDPから上場企業や投資家から指定された企業、またはCDPの基準により選定された企業に送付されます。また、送付されない企業も自主的な回答が可能です。

CDPスコアは年に1回のスケジュールで運営され、毎年4月頃に質問書が送付されます。2024年からは6月に送付される予定です。

CDPでは、企業の回答に基づいて、9段階の格付けが行われます。この格付け結果を通じて、企業の環境への取り組みレベルを確認することができます。

スコア

レベル

レベルの説明

A

リーダーシップ

環境問題や気候変動が起こることで発生する自社や業界のリスクを把握し、また新しい機会をビジネスチャンスととらえ、環境保全活動などを実施し、それらを組み込んだ長期計画を策定して業界を牽引している

A-

B

マネジメント

自社事業が環境に与える影響を把握し、改善の努力と環境問題を事業戦略に組み込む検討を始めている

B-

C

認識

自社の事業と環境問題の関係や、初歩的な調査を実施している

C-

D

情報開示

質問への回答を実施している。環境問題と自社事業との関連性や、環境問題と事業成長戦略などについてはまだ考えることができていない

D-

F

開示なし

回答しなかった、もしくは未公開設定(企業名は開示される)

CDP質問書に回答するメリット

外部資金の調達

CDPの質問内容は機関投資家などの要求をもとに作成されているため、高いスコアを獲得することは企業の市場における評価を高め、ESG投資を受けやすくなります。

CDP気候変動スコアは、ブルームバーグやQUICKなどの株価情報サービスで閲覧可能であり、また、MSCIやSTOXXなどの投資指数でも利用されています。さらに、近年ではGoogleファイナンスでも銘柄情報にCDP気候変動スコアが表示されるなど、個人投資家からの関心も高まっています。

また、CDP質問書の気候変動は、TCFDの11項目に対応しており、有価証券報告書の内容に応用することができます。詳細は「『企業内容等の開示に関する内閣府令』の改正に伴う有価証券報告書へのサステナビリティ情報の開示」をお読みください。

環境に関するリスク・機会と取り組みの進捗状況の把握

CDPの質問書は、TCFDなどの気候変動や環境への対応に関する枠組みに関連しており、投資機関や世界市場で求められる基準と自社の取り組みレベルのギャップを把握することに役立ちます。また、気候変動・水セキュリティ・フォレストに関するリスクや機会を把握でき、リスクの最小化や機会の最大化に向けた戦略策定につなげることができます。

評判・競争力の向上

CDPでは、環境への取組み状況がスコアとして開示されるため、同業他社との比較が容易になります。CDPのスコアは、環境への取り組みを重視する顧客からの評判を向上させ、他社との競争上の優位性を高めることにつながります。

CDPの回答状況

世界の傾向

世界的に見ても、CDP質問書への回答を行う企業の数は年々増加しています。2022年には、世界の時価総額の半分に相当する18,700社以上が回答し、2015年のパリ協定署名時と比べて2倍以上に増加しています。

環境リスクへの市場評価の高まりから、今後も回答企業数の増加傾向は続くと予想されています。

CDPに回答した企業数。2020年から2022年にかけて急激に増えた

図1. 世界におけるCDP回答企業数の推移
出典:CDP global

日本の傾向

2022年の日本におけるCDPへの回答企業数は、2021年から88%増加し、1,700社以上に達しました。

Aスコアを獲得した企業の国別分布を見ると、91社が日本企業であり、これは世界最多です。カテゴリー別に見ても、いずれも日本企業が最多です。

気候変動:75社
水セキュリティ:35社
フォレスト:4社

日本では、CDPに回答するメリットを重視して積極的に取り組む企業が多いとわかります。

2022年にCDP気候変動でAを取得した企業(国別)

図2. CDP気候変動Aリスト分類
CDP 気候変動レポート2022: 日本版」をもとに当社作成

2022年にCDP水セキュリティでAを取得した企業(国別)

図3. CDP水セキュリティAリスト分類
CDP 水セキュリティレポート2022: 日本版【ダイジェスト版】」をもとに当社作成

2022年にCDPフォレストでAを取得した企業(国別)

図4. CDPフォレストAリスト分類
CDP フォレストレポート2022: 日本版」をもとに当社作成

CDP質問書の内容

CDPの質問書は、世界的な環境対策や気候変動に対する取り組みに関する基準や枠組みと連携しています。質問項目は「モジュール」として分類され、各企業は自社が属する業界の分野別で回答すべきモジュールや設問が異なります。

また、スコアリング時には、各質問の相対的な重要性を反映するため、モジュールのサブグループである「カテゴリー」に分類され、各カテゴリーに重みが設定されています。したがって、カテゴリーの重みが大きい項目ほど重要です。

ここからは、重要となる取り組みを中心に、それぞれの質問書のモジュールとカテゴリーについて解説します。

気候変動

2023年のCDP気候変動質問書は、17モジュールで構成され、スコアリング時には17カテゴリーに分類されます。

CDP気候変動で高いスコアを獲得するには、ガバナンスやリスク管理プロセスで得点するのが重要である

図5. 気候変動のモジュールとカテゴリー
CDP Scoring Category Weightings: 2023 -CDP Climate Change Methodology 2023-」をもとに当社作成

気候変動における重要な取り組みは、

  • ガバナンスにおいて取締役が気候変動の監督と責任を果たす
  • 気候変動に関するリスクを管理するプロセスを整備する
  • Scope1,2の排出量を算定・検証し、気候移行計画やGHG削減目標を設定する

などです。また、2022年から追加された生物多様性に関する質問は、現在は除外されているものの、今後重要とされる取り組みとなります。バリューチェーンや再生エネルギー導入に関する取り組みも求められます。

【関連する枠組み】

  • パリ協定
  • TCFD(気候関連財務情報開示タスクフォース)
  • 生物多様性ガイドライン

水セキュリティ

2023年のCDP水セキュリティ質問書は、12のモジュールで構成され、スコアリング時には13のカテゴリーに分類されます。

CDP水セキュリティで高いスコアを獲得するには、水リスク評価やバリューチェーンエンゲージメントなどが重要である

図6. 水セキュリティのモジュールとカテゴリー
CDP Scoring Category Weightings: 2023 -CDP Water Security Methodology 2023-」をもとに当社作成

水セキュリティにおける重要な取り組みは、

  • ガバナンスにおいて取締役が水セキュリティの監督と責任を果たす
  • 水に関するリスクを管理するプロセスを整備し、水リスクを特定する
  • 水に関する情報をモニタリングし、水リスクを削減するための目標設定やバリューチェーンへの関与を行う

などです。

また、2023年から追加されたプラスチックに関する質問は、現在は除外されているものの、今後は重要とされる取り組みです。その他、水に関する機会の特定や方針・戦略の策定、水質汚染の管理の取り組みも求められます。

【関連する枠組み】

  • CEOウォーターマンデート・ガイドライン
  • エレン・マッカーサー財団

フォレスト

2023年のCDP質問書では、フォレストは18のモジュールで構成され、採点時には14のカテゴリーに分類されます。

CDPフォレストで高いスコアを獲得するには、認証取得や追跡調査が重要である

図7. フォレストのモジュールとカテゴリー
CDP「FORESTS 2023: SCORING METHODOLOGY CATEGORY WEIGHTINGS」をもとに当社作成

フォレストの回答企業は、木材製品、パーム油、畜牛品、大豆の生産・加工または製造品の調達先である場合に該当します。ゴム、カカオ、コーヒーは採点対象外です。

フォレストにおける重要な項目は、

  • 森林破壊ゼロ・自然生態系転換なしに関する方針・コミットメント・目標を設定する
  • 生産地の調査
  • 調達物の認証取得
  • バリューチェーンエンゲージメント

などです。森林破壊に関するデータの収集やリスク評価、戦略などの取り組みも求められています。

【関連する枠組み】

  • 森林に関するニューヨーク宣言(NYDF)
  • アカウンタビリティフレームワーク・イニシアチブ(AFi)

まとめ

  • CDPとは、イギリスの国際環境NGOであり、企業や自治体などが自身の環境影響を管理するためのグローバルな情報開示システムを運営している
  • CDP質問書は毎年、上場企業や投資家から指定された企業、またはCDPの基準により選定された企業に送付される。送付されない企業も自主的な回答が可能
  • CDP質問書は、気候変動、水セキュリティ、フォレストの3種類があり、今後「オーシャン」の追加が見込まれる
  • CDPに対応することで、ESG投資分野で優位性が高まり、外部資金の調達、取り組みの進捗状況把握、評判・競争力向上に役立つ
  • 質問書にはモジュールごとに質問が設定されており、スコアリング時はカテゴリーに分類される
  • カテゴリーには重みが設定されており、重みが大きい項目ほどスコアの向上に重要である

当社では、初めてCDPの回答に取り組む企業さまへ向けたサポートや、さらなる高スコア獲得の支援を行っております。CDPに対応してこなかったというお客さまでも、これまで構築してきた内部管理体制を回答することで高いランクを取得された例もございます。どうぞお気軽にご相談ください。

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