森林の多面的機能とは?概要や企業の森林利用の効果について解説!
はじめに
日本は世界でも有数の森林を有する国であり、国土面積の68.4%、2,494万haが森林に覆われています(出典:FRA2020)。世界の平均森林率は約31%であり、日本は先進国(OECD諸国)の中で、フィンランド(73.7%)、スウェーデン(68.7%)に次ぐ第3位の森林率を誇っています。森林には、豊かな緑、清涼な空気、澄んだ水など私たちが昔から「自然の恵み」と呼ぶさまざまな恩恵があります。これらは、森林の多面的機能がもたらしているものです。今回は、森林の多面的機能について詳しく紹介します。
森林の多面的機能とは
森林は、水を浄化したり、多様な生物の生息地になったり、心を落ち着かせたり、防災に寄与したりなど、さまざまな機能によって人々の生活を支えています。また、その美しい景観(ランドスケープ)は、行楽や芸術の対象として私たちに感動を与え、心の支えとなっています。これらの機能は、森林の有する「多面的機能」と呼ばれています。
森林の8つの機能
森林は、国土の保全、水源の涵養、地球温暖化の防止、生物多様性の保全、木材などの林産物供給など、さまざまな機能を有しています。具体的に、森林の有する8つの機能を紹介します。
表 森林の有する多面的機能一覧
(出典:林野庁「森林の有する多面的機能について」を基に当社作成)
企業の森林利用の効果
社会全体でSDGsやサステナビリティ推進への関心が高まる中、森林や木材の利用に関する取り組みを進める企業が増えています。森林の機能を維持するためには適切な整備が必要ですが、企業が森林の利用に関わることで、その整備が進むと期待されています。
林野庁の調査によると、企業の森林に関わる活動の主な目的は、社会貢献(74.9%)、地域との交流(47.4%)、事業活動による環境負荷の低減目的(46.2%)、事業領域の拡大(41.7%)、新規顧客開拓(34.4%)、消費者・投資家への訴求(23.5%)となっています。また、売上向上に結びついたと回答した企業は25.9%でした。地域との交流については、目的や期待よりも、その効果が高いことも報告されています(出典:林野庁「令和元年度 森林・林業白書」)。
企業が今後取り組むべきこと
今後、企業は事業活動に伴う環境への影響を軽減するために、影響を与えた分を森林機能の保全や拡大などで補う活動が求められる可能性もあります。そのため、森林機能の保全活動を積極的に行うだけでなく、保全に伴う森林機能の効果(二酸化炭素吸収、水資源貯留など)を定量化し、計画的な保全活動を行うことが重要です。
当社では、森林の二酸化炭素吸収量や、水源涵養機能を定量化するサービスを提供しています。「森林に関する取り組みを定量的に評価したい」、「今後環境負荷削減のために森林に関する取り組みを実施したい」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひご相談ください。
まとめ
- 森林機能は「多面的機能」を持っている
- 森林機能は、生物多様性保全、地球環境保全、土砂災害防止機能/土壌保全機能、水源涵養機能、快適環境形成機能、保健・レクリエーション機能、文化機能、物質生産機能の8つに分類される
- 企業の森林利用の目的は、社会貢献、地域交流、事業活動による環境負荷低減、事業領域拡大などが多く、特に地域交流が期待以上の効果をもたらす傾向がある
- 25%以上の企業が、森林利用により売上向上に結びついたとしている
- 今後、企業は事業による環境への影響緩和のために、森林の保全に伴う森林機能の効果(二酸化炭素吸収、水資源貯留など)を定量化し、計画的に活動することが重要である
執筆者:霜山竣、中野晴康
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