自然共生サイト登録のメリットとは? 認定基準と事例を解説

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生物多様性保全の重要性が高まる近年、「自然共生サイト」が注目を集めています。自然共生サイトとは、企業の森や里地里山など、民間の取り組みによって生物多様性が守られている区域を国が認定する制度です。

この記事では、自然共生サイトの概要や位置付け、企業が認定を受けるメリットについて解説します。

自然共生サイトとは

自然共生サイトとは、民間などの取り組みによって生物多様性の保全が図られている区域であり、後述する「30 by 30」達成に向けて日本が独自に施行する制度です。2026年3月時点における自然共生サイトの認定数は569件です(環境省 2026)。

自然共生サイトに認定された区域は、保護地域との重複を除き、OECM(後述)として国連環境計画世界自然保護モニタリングセンター(UNEP-WCMC)の国際データベースに登録されます(環境省 2025)。

自然共生サイトは2023年に始まり、2025年4月に施行された「地域生物多様性増進法」によって法制化されました。法制化以前の認定者は環境大臣でしたが、新制度下では主務大臣(環境大臣、農林水産大臣、国土交通大臣)となります。

また、法制化前の認定範囲は「現状で生物多様性が豊かな区域」のみでしたが、法制化後は「現状で豊かな生物多様性を維持する活動」もしくは「生物多様性を回復・創出する活動」に変更されました。これにより、既に豊かな場所だけでなく、生物多様性を豊かにする活動が行われている場所も、自然共生サイトに認定される可能性が生まれました。後者は、活動の継続によって生物多様性が豊かになった時点でOECMへの登録が予定されています(環境省 2025)。

令和6年度以前、自然共生サイトの認定対象は「民間等の取組によって保全されている、生物多様性が豊かな地域」だった。令和7年度以降は「民間等による生物多様性を増進する活動を実施する区域」が対象となり、具体的には「生物多様性を維持/回復/創出する活動を実施する区域」である。

自然共生サイト認定基準の1つは、以下のいずれかの価値を維持・回復・創出する活動が計画されていることです。

生物多様性保全上の重要性が既に認められている場

原生的な自然生態系が存ずる場

二次的な自然環境に生態系が存ずる場

生態系サービスと健全な生態系が存ずる場

地域の伝統文化のために活用される自然資源の場

希少種が生育生息している、またはその可能性が高い場

分布が限定されている、特異な環境へ依存する等の種が生育生息している、またはその可能性が高い場

機能

越冬、渡り等の動物の生活史にとって重要な場

既存の保護地域、認定区域に対する緩衝機能な連結性を備える場

環境省、環境再生保全機構「身近な自然も生き物たくさん『自然共生サイト』」をもとに当社作成

自然共生サイトへの登録を希望する場合は、申請書を作成して独立行政法人環境再生保全機構に提出し、同機構および審査委員会、関係省庁による審査を受ける必要があります。当社は自然共生サイトの認定申請を支援するサービスを提供していますので、自然共生サイト制度に興味のある方はお気軽にご連絡ください。

なお、生物多様性保全推進支援事業が実施されているため、自然共生サイトに関する取り組みの経費の一部は国から交付を受けることができます環境省 2026)。「30 by 30」達成に向けて、自然共生サイトの取り組みが促進されているのです。

自然共生サイトの渡り鳥

自然共生サイトを理解するためのキーワード

自然共生サイトの制度について理解するには、前述した「OECM」および「30 by 30」という概念も知っておく必要があります。これら2つのキーワードについて解説します。

OECM

OECMとは、Other Effective area-based Conservation Measuresの頭文字をとったもので、国立公園のような保護地域を除く、生物多様性の保全を長期的に達成できる方法で管理されている地域です(環境省 2022)。2018年の生物多様性条約COP14にて定義された概念で(環境省 2022)、民間などの取り組みにより生物多様性が保全されている地域や、保全を目的としない管理が結果として保全にも貢献している地域などが含まれます。

OECMの例として、以下が挙げられます。

  • 里山
  • 企業が保有する森林
  • ビルの屋上緑地
  • 大学キャンパス内の緑地 など

OECMという概念の誕生は、身近な場所が生物多様性を支える重要な地域として再評価されるきっかけとなりました。

OECMと自然共生サイトの違いの1つは、国立公園のような保護地域を含むかどうかです。自然共生サイト制度は、保護地域と重複する区域も認定を受けることができます。一方、OECMは保護地域を含まないため、自然共生サイトのうち保護地域を除いた区域がOECMとして登録されます。

30 by 30

30 by 30は、2022年に採択された生物多様性に関する2030年までの国際目標「昆明・モントリオール生物多様性枠組」における主要な目標の1つです。陸と海のそれぞれ30%を、保護地域およびOECMの拡張や管理によって保全することを目指しています(環境省)。30 by 30は、「昆明・モントリオール生物多様性枠組」を受けて日本で策定された「生物多様性国家戦略2023-2030」にも盛り込まれています。

2026年2月時点で、世界では陸域の17.62%、海域の9.86%が保護地域およびOECMとして保全されており、30%という目標には達していません。日本国内では陸域の29.86%、海域の13.79%が保全されており、世界水準を上回っているとはいえ、特に海域において引き続き、保護地域およびOECMの拡大を図る必要があります(Protected planet 2026)。

自然共生サイトは陸と海の両方を対象とし、保護地域とOECMにまたがる。

自然共生サイトの支援証明書

自然共生サイトの認定を申請しない場合も、寄付や投融資などを通じ自然共生サイトへの支援を行うことで、「自然共生サイト等に係る支援証明書」の発行を受けることができます環境省)。企業が支援する対象としては、「地域でつながりのあるサイトや自社のバリューチェーンに関連する自然サイト等」が想定されています(環境省 2025)。これまでには以下のような事例で支援証明書が発行されました(環境省)。

  • 森林の清掃・間伐・植樹活動への人的・金銭的支援(宮城衛生環境公社)
  • 生物多様性調査への人的支援(LINEヤフー株式会社)
  • 環境調査への技術的支援(大成建設株式会社)

支援証明書はCSR活動の証明だけでなく、TNFD開示などにも活用できるよう設計されています。環境省は、自然共生サイトを支援したい企業とサイトのマッチングも手がけており(環境省)、自然共生サイト制度の活用が期待されています。

自然共生サイトを支援することで「自然共生サイト等に係る支援証明書」が発行される

企業が自然共生サイトに関わるメリット

ここからは、自然共生サイトの認定申請や支援といった取り組みが企業にもたらす3つのメリットを紹介します。

外部評価の向上

自然共生サイトとしての認定取得は、自社の管理区域が生物多様性を支える重要な拠点として国に認められたことを意味します。ネイチャーポジティブについて具体的な行動をとっていること、国際目標である「30 by 30」に貢献していることをステークホルダーにアピールできるでしょう(環境省)。生物多様性保全に取り組む姿勢を通じて、外部からの評価・信頼の向上、それによる競争力の強化が期待されます。

TNFD開示への活用

自然共生サイトに関する取り組みの情報は、TNFD開示に用いることができます。自然共生サイトの認定を受けた企業はもちろん、支援証明書を発行された企業は、開示する自然関連情報の根拠として証明書の活用が可能です。(環境省)。

社内認知の向上

自然共生サイトの認定取得や支援によって、サステナビリティ活動の社内認知が高まることが期待されます。認定の取得や支援証明書の発行を社内で発信し、自社が生物多様性保全に貢献しているのを社員に知らせることは、サステナビリティ活動の成果や意義を認識してもらうきっかけにもなります。

企業が自然共生サイトに取り組むことで、外部評価や社内認知の向上、TNFD開示への活用といったメリットが得られる

企業による自然共生サイトの認定事例

最後に、自社の敷地が自然共生サイトに認定された企業の具体的な取り組みや成果について、事例を通して解説します。

三井住友海上火災保険

三井住友海上火災保険株式会社の「駿河台緑地」(東京都千代田区)は、本社ビルの屋上庭園や周辺の緑地で構成され、2023年に自然共生サイトの認定を受けました。皇居と上野公園の中間に位置し、これらを行き来する鳥が休める場所となるよう整備されています。蓄雨機能などの生態系サービスが提供されており、絶滅危惧種の生息も確認されています(環境省)。

景観生態学や保全生態学の専門家によるデータ解析での協力や、野鳥の個体数・種数の継続的なモニタリングなどの取り組みが、多様な野鳥や昆虫が集まる緑地の形成へとつながりました。環境学習イベントの開催や屋上庭園の貸し出しなど、地域における交流拠点としての役割も担っています。

駿河台緑地は「温暖化配慮行動計画書制度表彰事業所」や「グリーンレジリエンス大賞」など多くの認定・賞を受けており、緑地整備の活動が企業の評価向上に貢献しているといえるでしょう。

パナソニックホールディングス

パナソニックホールディングス株式会社の「共存の森」(滋賀県草津市)は、普通種と呼ばれるような身近な生物が豊かに生息する環境の創出を目指して整備された工場緑地です。動植物調査をもとに地域の生態系に対応した植生を整備することで、周辺緑地とのつながりが形成され、地域全体の生態系を支える拠点となっています。地元小学校の環境学習を実施するなど、地域に対する企業貢献の一環にも位置付けられます。

近年では企業に対し、生物多様性保全への取り組みを求める動きが強まっています。環境省による自然共生サイト制度の整備は、企業にとってネイチャーポジティブの取り組みを推進するチャンスです。

当社は、自然共生サイトの申請サポートや専門家による動植物調査を行っております。森林の多面的機能評価や水源涵養機能の定量評価など、生物多様性に関する多角的な支援サービスも提供していますので、サステナビリティ施策でお悩みの方はお気軽にお問い合わせください。

執筆者:今村 百花

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