アサヒグループジャパン株式会社
支援事例

自社拠点から「流域」へ視点を拡張。
ステークホルダーとの対話が生む、真の水リスクマネジメントへの挑戦

八千代エンジニヤリング株式会社のサステナビリティNaviが支援した、アサヒグループジャパンのご担当者さまと当社コンサルタント

左:アサヒグループジャパン株式会社 火置恭子さま
右:当社コンサルタント 小西拓海

アサヒグループジャパン株式会社

事業部名:SCM部
担当者:火置恭子さま
事業内容:酒類・飲料・食品事業を中核とするアサヒグループの日本事業統括
従業員数:約2,300名

相談の背景
水リスクへの対応は、自社の製造拠点だけではなく「流域」の観点で取り組む必要があった

導入の決め手
流域観点のプロジェクトで他社の支援実績があり、行政など日本特有の事情にも理解が深い

支援の効果
社内外での合意形成が進み、水リスク低減に向けた流域ステークホルダーとの連携を創出できた

「工場単位のリスク評価」を終え、ネクストアクションは?

―― 当社にご依頼いただく前は、どのような課題がおありでしたか?

火置 5年間かけて全工場の水リスク調査を完了させ、「次はどうするか」という見直しの時期を迎えていました。ですが、「工場内で今すぐ具体的な対策を行わなければならない」というほど緊急度の高いリスクは顕在化していなかったんです。

一方で、日本においても気候変動の影響などにより、渇水などの水リスクが顕在化している地域もあります。そこで視点を変えてみました。

「自分たちの工場で何ができるか」から「流域全体で何ができるか」へと視野を広げたところ、自社の水リスクへの対応としてやるべきことがまだまだありそうだと気づいたんです。流域単位での水リスクマネジメントをどう進めていくか、模索が始まりました。

国際的には、流域単位で活動する必要性は高まっています。実際、グループのヨーロッパ拠点では既に同様の取り組みが始まっていました。日本でも取り組む必要性をいかに社内に伝えるかが、私自身の大きな課題でした。

アサヒグループジャパンでサステナビリティを推進する火置恭子さま

―― 数あるコンサルティング会社から、なぜ当社を選んでくださったのでしょうか。

火置 大きな決め手は2つありました。1つは、流域マネジメントに関する国際イニシアチブ「AWS(Alliance for Water Stewardship)と協業していること。もう1つは、日本の水環境や社会情勢を深く理解されていることです。

海外のフレームワークをそのまま持ち込むだけだと、日本の現場には馴染みません。御社は国際動向と日本のローカルな実情の双方に精通しており、私たちの「探索的な挑戦」に寄り添ってくれると感じました。また、以前に工場単位での水リスク調査を依頼したこともあり、これまでの経緯を理解したうえで次のステップを提案してくれるという安心感もありましたね。

正解のない課題にロジックとファクトで伴走する、頼れるサポーター

アサヒグループジャパンでサステナビリティを担当する火置恭子さまと、八千代エンジニヤリングのコンサルタント小西拓海

―― 2016年から断続的にご支援しておりますが、当社サービスのどのような点にご満足いただいていますか?

火置 一言で表現すれば、「議論に付き合っていただいた」ことです。今回の取り組みは、課題自体がなかなか特定できない、探索的なものでした。3つのフェーズから成るプロジェクトでしたが、最初から3つと決めていたわけではなく、1つのフェーズが終わって次にどうするかを都度判断していった結果、3フェーズになったんです。

御社には、課題を特定するためのファクト作りやデータ整理で特に心強くサポートいただきました。正解がないところに正解を作りにいくようなプロジェクトなので、御社なしでは難しかったと思っています。

小西 ありがとうございます。流域エンゲージメントにおける最初の重要な作業は、「流域」の範囲を特定することです。一般的な「川の流域」と重なることが多いとはいえ、地下水を利用したり遠くの河川から管路で水を引いたり(流域外分水)することもあるため、「自社の影響範囲はこの流域である」と定義することから始まります。

流域を定義したあとは、コミュニケーションをとるべき流域ステークホルダーの情報を取得することが大きなハードルです。基本的に、流域は複数の自治体にまたがっています。そのなかで、流域の現状を理解するにはどの自治体の誰に連絡をとるかを定め、我々が流域エンゲージメントに取り組んでいる背景を相手に理解してもらう必要があります。

当社は既にお付き合いのある自治体も多いので、ネットワークの蓄積を活かして、ヒアリングの設定をご支援できるのが強みです。

今回のプロジェクトでは、流域における課題を特定するため、さまざまなステークホルダーへのヒアリングを行いました。話を聞く相手によって、重視している要素や物事のとらえ方に大きな幅がありますから、ヒアリングした情報を「御社のリスク低減と価値向上につながるか」に焦点を当てて整理しました。

ロジックや社会動向の整理、流域に関する課題感の解釈など、火置さんが本取り組みの意義を社内で説明するための「根拠」を一緒に作っていったイメージです。社内やグループ企業への説明は、火置さんが全力で取り組まれました。

企業主導のヒアリングで、自治体間のつながりが生まれた

―― プロジェクトの結果、どのような変化が起こりましたか?

火置 最も大きな変化は、流域で取り組む重要性がグループ内で浸透し、「実際にアクションを起こすフェーズ」に移行できたことです。事業会社向けの説明会も実施しますし、工場の担当者も巻き込めるようになりました。

非常にうれしかったエピソードもあります。流域における上流と下流の自治体にヒアリングを行い、結果をレポートとして共有したんです。すると、そのレポートをきっかけに、自治体間で対話する動きが生まれました。

流域内の自治体につながりを生み出せたのは、とても意義深いことだと感じています。自発的に水リスクに取り組む仲間を増やす意味でも、流域エンゲージメントが実を結んだ瞬間でした。

小西 やはり流域エンゲージメントにおいては、ステークホルダーと直接対話して現状を把握することが非常に重要です。私も今回のプロジェクトであらためて感じました。

流域単位での課題解決や価値創造は、1社だけで達成できることではありません。リスクの把握だけでなく、「仲間を作る」ことが、この取り組みの最大の価値だと思っています。

火置 そのとおりです。リスク対応は当然として、この活動を価値創造につなげたいと思っています。それが私たちにとっての価値にもなり、流域ステークホルダーにとっての価値にもなる。そうでなければ、水リスクマネジメントは持続可能でないと感じています。

流域エンゲージメントの「ご縁」を次のサステナビリティ施策に活かす

── 今後は、水リスクに関してどのような施策を進めていきたいとお考えですか?

火置 広島県に社有林「アサヒの森」があり、その管理を通して森林経営のノウハウを培ってきました。今後は社有林に留まらず、自社工場の流域でステークホルダーと連携し、これまでのノウハウを活かした森林管理による水源涵養機能の維持に取り組む予定です。

また、流域における新たな森林用地の探索にも、今回のプロジェクトで生まれたネットワークを活かして取り組んでいます。せっかくのご縁ですから、次の活動に活かしていきたいです。

ほかにも生物多様性の保全など、流域でまだできることがあればやっていきたいですね。自社のみでできないことは、ほかの方々の力もお借りしながら。

小西 御社だからこそできることがあると思っています。水を利用・商品化して消費者に届けている企業として、上流(水源)の価値を見出すことも、一般消費者の意識を変えることもできる。今回の流域健全性評価の結果は、さまざまな方向に活用していけると期待しています。

―― 流域の水リスクに取り組もうとしている企業へメッセージをお願いします。

火置 正直なところ、この課題に取り組むハードルは高いと思います。「日本は水の豊かな国だ」という印象が強いため、水リスクの重要性に対する理解が十分でなく、「本当にやる必要があるのか」という意識の壁が厚いのが現状です。

しかし、日本にも水リスクは存在しており、問題が起こってから対応を考えるのでは間に合いません。リスクが顕在化する前に動くことが重要です。

流域エンゲージメントにおいては、さまざまな相手に話を聞きに行ったり、協力できる仲間を見つけたりすることがとても大事です。地道な取り組みなので、思い通りに事が運ばないこともあります。

ですが試行を重ねることで、「誰にヒアリングすれば前に進めるのか」が見えてきました。1年間続けてきてよかったと思います。

小西 企業が流域エンゲージメントに取り組むことで地域に変化が生まれるのだと、今回のプロジェクトであらためて実感しました。

リスクが顕在化して初めて動き出すのでは遅いですから、ステークホルダーと日頃のコミュニケーションを積み重ねておくことが、将来のリスク低減にも、何かやりたいと思ったときの動き出しにも、重要な意味を持ちます。

その最初の一歩を、ぜひ私たちと一緒に踏み出していただければと思います。

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