水に関する意識調査

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近年のサステナビリティに関するグローバルな動向として、SBTNやTNFDなど自然資本に対するコミットメントと情報開示を求めるフレームワークの導入が進んでいます。私たちが普段当たり前に使っている「水」も、生活や企業活動を支える大切な自然資本の1つであり、持続的利用に向けて、水資源の現状を知ることや保全に向けた効果的なアプローチが何であるかを考えていくことが重要です。

当社では、水資源の保全と活用の両立に向け、一般市民の水に関する意識調査をしています。2021年に実施した「地下水に関する意識調査」では、一般市民の方々の地下水に関する知識の不足や、地域や年代による回答傾向の違いが明らかになりました。そこで今回は、それらの要因に関する知見の収集を目的として、一般市民の方々の地下水や水に対するアンケート調査を実施しました。

調査概要

対象人数:1,600人
対象者:全国47都道府県に居住する20代~60代の男女
調査方法:インターネット調査
調査期間:2022年9月7日~9日

【設問】

  1. ナチュラルミネラルウォーター(天然水)の水源は何だと思いますか?(単一回答)
  2. 地下水のイメージについて、下記の中から全てお答えください。(複数選択可)
  3. 地下水や水循環に関して学ぶ機会はありましたか?(複数選択可)
  4. 現在、日本において水に関して最も深刻な問題は何だと思いますか。(単一回答)
  5. 排水に伴う水環境への負荷(環境に悪い影響)が最も大きいのはどのカテゴリーだと思いますか?(単一回答)
  6. 製造工程や原材料として、水資源(淡水)が最も使われている製品はどれだと思いますか?(単一回答)
  7. 企業の環境に配慮した取り組みについてどのように思いますか?(単一回答)
  8. 地下水の保全はだれが率先して行うべきだと思いますか?(単一回答)

北海道
東北

関東 

北陸 

中部 

近畿 

中国 

四国 

九州 
沖縄

合計 

20代

40

40

40

40

40

40

40

40

320

30代

40

40

40

40

40

40

40

40

320

40代

40

40

40

40

40

40

40

40

320

50代

40

40

40

40

40

40

40

40

40

60代

40

40

40

40

40

40

40

40

40

合計

200

200

200

200

200

200

200

200

1,600

アンケートの年代・地域別回答数

調査結果

Q1. ナチュラルミネラルウォーター(天然水)の水源は何だと思いますか?(単一回答)

ナチュラルミネラルウォーターは、「地中でミネラル分が溶解した地下水で、沈澱、ろ過、加熱殺菌以外の処理をしていないもの」と定義されています。そのため、この質問の回答は「地下水」が正解となります。アンケート結果を見ると、40~60代は地下水と回答した割合が70%を超えていますが、30代では56%、20代では38%と若い世代ほど正解率が低い傾向でした。

近年、ナチュラルミネラルウォーターの市場が拡大しており、1982年から2021年にかけて生産量が約48倍に増加しています( 日本ミネラルウォーター協会の統計調査 )。コンビニや自動販売機等、多くの場所で手軽に購入できるため、誰もが飲んだことがあるでしょう。

しかし、若い世代は、ナチュラルミネラルウォーターの水源を河川水や水道水として捉えている傾向にあります。これは、地下水に触れる機会がないなどの影響で、地下水が飲料として使われていると認識している人が少ないのかもしれません。

ナチュラルミネラルウォーターに関するアンケート結果。20代を除く年代では「地下水」が最も多い

図1.ナチュラルミネラルウォーターの水源に関する年代別のアンケート調査結果

Q2. 地下水のイメージについて、下記の中から全てお答えください。(複数選択可)

ナチュラルミネラルウォーターの水源である地下水ですが、地下水のイメージについて調査した結果、「冷たい」、「おいしい」、「きれい」といったポジティブなイメージの回答が多いことが分かりました。年代で見ると、Q1の傾向と同様に高い年代ほどポジティブなイメージが多く、「おいしくない」、「汚い」、「匂いがある」といったネガティブなイメージが若い年代ほど多くなっています。

地下水のイメージに加え、ナチュラルミネラルウォーターの水源に関する結果からみても、若い世代ほど地下水への関心が低い、あるいは知見が少ないと考えられます。しかし、近年は、2014年に施行された水循環基本法を機に、内閣府が地下水や水循環に関する教材の配布や映像教材の公開を行う等、教育に力を入れています。

地下水の源に関するアンケート結果。どの年代でも「冷たい」の回答が最多

図2. 地下水のイメージに関する年代別のアンケート調査結果

Q3. 地下水や水循環に関して学ぶ機会はありましたか?(複数選択可)

地下水や水循環に関して学ぶ機会について調査した結果、20代と30代で「小、中、高校の授業で学んだ」割合が45%を超え、40代以上よりも多いことが分かりました。現在、内閣府を中心に国や自治体が地下水や水循環に係る啓蒙活動に力を入れているため、今後はさらに学ぶ機会が増加すると考えられます。また、2022年6月にベータ版v0.2が公開されたTNFDにあるとおり、地下水や水環境を含む自然資本への取り組みが着目されると予想されます。

そのため、これまでの水に関する企業の取り組みは節水が中心でしたが、これからは水への依存および影響と事業の関係を理解し、水に関する課題がある地域では、水を使う企業が積極的に関与していくことが求められる可能性があります。この地域への貢献の例としては、環境教育の場の提供や水に関する地域課題への貢献も含まれます。このような活動は、企業価値を高めていくために、これまで以上に重要になるかもしれません。

地下水や水循環を学んだ機会に関するアンケート結果。50代・60代では「学んだ経験はない」が6割を超えた一方、20代・30代では4割台だった

図3. 地下水や水循環について学ぶ機会に関する年代別のアンケート調査結果

Q4. 現在、日本において水に関して最も深刻な問題は何だと思いますか。(単一回答)

結果は、「河川や湖の水質汚染」(40%)、「地下水汚染」(18%)、「河川や湖の水の枯渇」(15%)、「地下水の低下」(12.2%)、「特に問題はない」(11.8%)、「その他」(3%)となっており、「水資源量」よりも「水質」に関する回答が多い傾向となりました。

「現在、日本において水に関して最も深刻な問題は何だと思いますか」への回答結果。「河川や湖の水質汚染」が40%で最多

図4. 国内における水問題のイメージに関するアンケート調査結果

最近、海外のニュースでは「深刻な水不足や干ばつによって川や湖沼の水が干上がり、底から遺跡や軍艦が見つかった」などの事例を見かけるようになりましたが、一方の国内ではそのような事例が話題となることは多くありません。一方、日本ではゲリラ豪雨や水害による被害が多くなっており、国内において水資源の不足を感じる機会が身近であまりないことがこのような結果につながっているものと考えられます。

年代別の回答では、全世代共通して「河川や湖の水質汚染」の回答割合が最も多くなっていますが、地下水に関する回答割合は年齢層が高いほど多くなる傾向が顕著に見られ、Q2の結果と同様に地下水への関心が年代によって異なることを示すと考えられます。

「現在、日本において水に関して最も深刻な問題は何だと思いますか」への年代別回答結果。「河川や湖の水質汚染」が全年代で最多

図5. 国内における水問題のイメージに関する年代別のアンケート調査結果

Q5. 排水に伴う水環境への負荷(環境に悪い影響)が最も大きいのはどのカテゴリーだと思いますか?(単一回答)

「工業用水」の回答が57%と6割程度を占める結果となり、一般市民の方々の工場排水に対するイメージの悪さが明らかになりました。

「排水に伴う水環境への負荷が最も大きいカテゴリー」の回答として最も多かったのは「工業用水」だった

図6. 排水に伴う水環境への負荷が大きいカテゴリーに関するアンケート調査結果

しかしながら、近年では、放流先の水質負荷を低減するために排水基準よりも厳しい自社基準を設けるなど、リスクマネジメントにおいて先進的な取組みを行っている工場も多くあります。排水基準を遵守した排水管理はもちろんのこと、ブランドイメージの維持や風評トラブルを避けるためにも、リスク低減に向けた自社のアクションについて、ステークホルダーに向けて適切に発信していくことも企業にとっては重要です。

また、生活排水や農業排水の中にも、水質汚濁の原因となるリンや窒素などの有機物が含まれています。例えば、生活排水中の洗剤や油、食べ残し、過剰な施肥等が原因の1つです。普段の生活においても、環境に配慮された製品の利用や原因となる物を直接流さないなど、小さな工夫で水環境の保全に貢献することができます。

Q6. 製造工程や原材料として、水資源(淡水)が最も使われている製品はどれだと思いますか?(単一回答)

結果は、1位が「誰のものでもない」(43.5%)、2位が「市民、国民」(22.5%)、3位が「国」(19.3%)となりました。

回答数が多かった項目上位3つは、パルプ/紙事業が24%、食料品事業が20%、飲料事業15%となりました。食料品や飲料については、製品の原材料として直接水が使用されていることから、「どのように水が使用されているのか」といったイメージがしやすいことも回答数が多かった理由の1つなのではないかと思います。

「製造工程や原材料として水資源が最も使われている製品は」という質問への最多回答は「パルプ/紙」(24%)

図7. 淡水が最も使用されている製品のイメージに関するアンケート調査結果

しかしながら、国土交通省から公表されている「令和3年度版 日本の水資源の現況」にあるように、実際は「化学工業」および「鉄鋼業」の淡水水使用量が他業種に比べて圧倒的に多いのが現状です。これらの業種では、製品を製造する工程で冷却水や洗浄水として使用される水が非常に多く、一般には水を使用するイメージがないのかもしれません。

淡水使用量は、紙製造業よりも化学工業や繊維工業のほうが多い

図8. 業種別淡水使用量の推移
出典: 国土交通省「令和3年度版 日本の水資源の現況(参考2-3-4)」 

企業が対応すべき水リスクは、物理リスク(洪水、渇水、水質汚染等)や規制リスク(条例等による各種規制)などさまざまです。実際の水使用量が他業種よりも少ない場合でも、本調査結果のように「水使用量が多い」と認識されている業種の企業では、評判リスク(風評被害等)を考慮したリスクマネジメントが重要です。そのため、水利用効率の改善に留まらず、地域や消費者などのステークホルダーとコミュニケーションを高めていくことが重要になると考えられます。

Q7. 企業の環境に配慮した取り組みについてどのように思いますか?(単一回答)

結果は、「イメージは良いが、製品を購入する際は性能や価格で選ぶ」が56%と過半数を占めましたが、一方で、31%は「環境に配慮している企業の製品を積極的に購入したい」と考えていることが分かりました。また、年代や地域によって傾向に差は見られませんでした。

「企業の環境に配慮した取り組みについてどのように思いますか」という質問への最多回答は「イメージは良いが、製品を購入する際は性能や価格で選ぶ」(56%)

図9. 企業の環境に配慮した取組みに関するアンケート調査結果

企業が事業活動を継続していくためには自然資本の持続的な利用が必須であり、また、外部からもサステナビリティに配慮した活動が求められる今、企業にとって「いかに経営と環境配慮を両立させるか」は非常に重要な課題です。消費者側が意識を変えることはもちろん重要ですが、企業にとっても、「サステナビリティに配慮した製品にどう付加価値を付けていくか」が今後の課題になると考えられます。

Q8. 地下水の保全はだれが率先して行うべきだと思いますか?(単一回答)

結果は、「自治体」が43%、「地下水を利用している企業」が41%、「地域住民」が16%と、上位2項目がわずかな差となりました。

「地下水の保全はだれが率先して行うべきか」との質問への最多回答は「自治体」(43%)

図10. 地下水の保全はだれがすべきかに関するアンケート調査結果

地域の地下水を利用しているステークホルダーは多岐にわたることから、多くの関係者を巻き込んだ取り組みが必要であるとのイメージで「自治体」を回答された方が多いのではないかと思います。しかしながら、「地下水を利用して事業活動を行っている企業が、責任をもって保全すべき」と考えている方も同じくらい多く、企業の責任ある行動への期待が大きいことが明らかになりました。

一企業で地域の地下水資源の保全を行うことはハードルが高いように思われますが、まずは自社が地下水にどのような負荷(水量、水質など)を与えているのかを把握し、程度に合わせた適切なアクションを実施していくことが重要です。また、その際はグローバルな水資源管理の概念である「Water Stewardship」に基づき、最終的には行政等のステークホルダーを巻き込んだ取り組みを進めていくことが望ましいと考えられます。

さいごに

今回は、2021年に実施した水に関するアンケート調査の結果を分析するため、全国1,600名の一般の方々を対象としてアンケートを実施し、地下水など水資源に対する関心度や考え方、水に触れる機会や学習経験の有無などを調査しました。

若い年代の地下水など水資源に対するイメージが低い傾向にある一方、今後、水資源に関する教育の機会が増加すると予想されるため、水資源への関心度向上とともに企業の水利用に関しても注目される機会が増えると考えられます。そのため、企業は行政・市民等のステークホルダーとともに水資源に関する保全活動を行うことが重要です。

また、環境配慮型の製品を積極的に購入したいと考えている消費者が31%を占めることが明らかになりましたが、一方で、環境配慮型製品にいかに付加価値を付けていけるかが企業にとって今後の課題となりそうです。

この記事が、企業の水リスクマネジメントに対するアプローチや、一般の方々の意識を少しでも変えるきっかけになれば幸いです。

※ 記事公開時点における当社の見解であり、情報の正確性や完全性を保証するものではありません

執筆者:霜山 竣、柳沢 早紀

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