FIT非化石証書の約定率が過去最高67.9%に。最新入札結果と価格上昇リスクを読む

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世界的な脱炭素化の流れのなかで、企業における再生可能エネルギーの調達は、もはや一部の先進企業だけのものではなく、多くの企業にとって事業継続に関わる喫緊の課題となっています。特に2030年の温室効果ガス削減中間目標の達成に向けて、再エネ価値の主要な調達手段である「FIT非化石証書」への関心は年々高まりを見せています。

しかし、足元では経済産業省による取引価格の見直し(下限価格の引き上げや上限価格の撤廃検討)が進められているほか、国際的な基準であるGHGプロトコルの改訂議論など、環境価値を取り巻くルールや市場環境は目まぐるしく変化しています。

「これまでは安価に調達できていたが、今後のコスト上昇が心配」
「複雑な制度変更の最新動向をキャッチアップしきれていない」

この記事は、そのようなお悩みや課題を抱える企業の環境・サステナビリティ部門や、再エネ調達のご担当者さまに向けて執筆しました。2025年度第4回(2026年5月22日)までの最新オークション結果を振り返りながら、今後のFIT非化石証書市場の動向と調達戦略のポイントをわかりやすく解説します。

非化石証書の種類

まずは、前提となる環境価値の基本として「非化石証書の種類」からおさらいしましょう。

非化石証書は、日本国内で取引される環境価値の1つです。非化石証書の活用によって、企業はカーボンフリーの電力を使用していることを示せ、脱炭素経営をアピールできます。

非化石証書には、以下の3種類があります。

  1. FIT非化石証書
  2. 非FIT非化石証書(再エネ指定あり)
  3. 非FIT非化石証書(再エネ指定なし)

表1. 非化石証書の種類

再エネ指定あり

再エネ指定なし

FIT非化石証書

非FIT非化石証書

非FIT非化石証書

電源

FIT電源(ex. 太陽光、風力、小水力、バイオマス等)

卒FIT・非FIT電源(ex. 大型水力、卒FIT等)

FIT適用外の電源(ex. 原子力、ごみ(廃プラ)発電等)

買手

小売電気事業者、需要家、仲介事業者

小売電気事業者(※ PPAは例外)

小売電気事業者

最低価格

0.4円/kWh(※ 2023年度初回オークションより0.4円/kWhに変更)

0.6円/kWh

0.6円/kWh

最高価格

4.0円/kWh

4.0円/kWh

4.0円/kWh

価格決定方式

マルチプライスオークション

シングルプライスオークション

シングルプライスオークション

資源エネルギー庁「非化石価値取引について」をもとに当社作成

経済産業省による非化石証書の下限価格の引き上げおよび上限価格の撤廃検討

経済産業省は、2027年度以降の再エネ価値取引市場(FIT証書市場)における上下限価格の見直し案を示しています。今後の企業の環境価値調達に影響を与える重要なポイントは以下の2点です。

下限価格の引き上げ

現行の下限価格は0.4円/kWhですが、2027年度から、現在の非FIT証書と同水準の0.6円/kWhへ引き上げる案が示されています。また、2028年度以降も非FIT証書市場の下限価格の水準と合わせることを基本とする案が示されています。

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上限価格の撤廃

現行の上限価格は4.0円/kWhですが、コーポレートPPAなどによる非化石電源への直接的な投資の妨げになるとの指摘から、第3フェーズ(2026~2028年度)中に撤廃する方向で検討されています。

これまで安価にFIT証書を調達できていた環境が変わり、調達コストの上昇が見込まれます。経済産業省が今回このような動きに踏み切った背景には、FIT証書の安価な調達がPPAのインセンティブを阻害しているという懸念や、非FIT証書の価値を需要家に訴求しづらくなっているといった課題を解消する狙いがあると考えられます。

これに対し、コーポレートPPAやグリーン電力証書などの相対取引を用いた再エネ調達は、市場の価格変動リスクを伴いません。あらかじめ定めた価格で長期かつ安定的な調達が可能となるため、将来のコスト高騰リスクをヘッジする有効な手段として一層の期待が寄せられています。

FIT非化石証書の最新オークション結果

非化石証書のオークションは、1年に4回(8月、11月、翌2月、5月)行われています。2025年度第4回(2026年5月22日)のオークション結果を反映させた、最新データをもとに解説します。

各年度の約定率の推移

以下の図1は、FIT非化石証書の約定率を年度別・時期別に示したものです。ここでいう約定率とは、売入札量に対する買入札量の割合を指しています。

2025年度の第1回約定率は67.9%と、過去最高値まで上昇しました。2030年の温室効果ガス削減目標達成に向けて、企業意識のさらなる高まりが影響していると考えられます。

2021~2025年度におけるFIT非化石証書の約定率

図1.FIT非化石証書の年度別約定率
JEPXの取引市場データを参考に当社作成
(※ 2021年度は第1回が行われていない)

各年度売入札量の推移

2021年度からの年度別売入札量(単位:kWh)を図2にまとめました。売入札量とは、日本卸電力取引所(JEPX)で実施される非化石価値取引市場において、発電事業者などが保有する非化石証書を「いくらで、どれだけの量(kWh)売りたいか」と提示して入札にかけられる量です。過去5年分のデータから、販売総量が年々減少傾向にあることがわかります。

2021~2025年度におけるFIT非化石証書の売入札量

図2.FIT非化石証書の各年度売入札量推移
JEPXの取引市場データを参考に当社作成
(※ FIT非化石証書の未約定分が翌年度に持ち越して販売されることはない)

今後も総量は緩やかに減少していくと推測されます。理由は以下の4点です。

  1. FIP制度への移行
  2. 家庭用のFITによる買取期間の終了
  3. FIT以前の制度であるRPS法(※)からの移行分の順次終了
  4. 非FITにして太陽光PPAに移行する事業者の増加

※ 固定価格買取制度(FIT)以前の制度で、2012年6月末に廃止。電力会社に対し一定割合の再生可能エネルギー調達を義務付けていた

FIT制度は2012年7月に開始しました。家庭用太陽光などにみられる10kW未満の太陽光発電は10年間、地熱は15年間、その他は20年間固定価格で買い取りする制度です。2032年以降は事業用についてもFIT期間の終了が生じるため、さらに下がり続けると考えられます。

加えて、再エネ賦課金の削減や電力需給の安定化を目的としたFIPへの移行も加速しています。FIPへの転換が進むと、FIT非化石証書の総量はますます減少するでしょう。

FIT非化石証書の今後の調達傾向

これまでの約定率をもとに、FIT非化石証書の今後の調達傾向を予測しました。後半では、GHGプロトコル改訂による今後の非化石証書の展望にも触れています。

2030年までの初回約定率予測

FIT非化石証書のこれまでの約定率から、初回オークションの約定率を年度別に予測しました(図3)。実績値に基づく数値で進捗した場合、2025年度に約68%であった初回約定率は、2026年度で90%を超え、2027年度には買入札量が売入札量を上回り、需要超過が発生すると予測されます。

2026~2030年度におけるFIT非化石証書の初回約定率の推計

図3.FIT非化石証書の初回約定率の推計
JEPXの取引市場データを参考に当社作成

また、図4は販売総量に対する初回約定量を示しています。前述したように販売総量の微減もあり、年間で販売される総量に対し初回の約定量は年々増加しています。

2026~2030年度におけるFIT非化石証書の販売総量に対する初回約定量の割合

図4.販売総量に対する初回約定量の割合
JEPXの取引市場データを参考に当社作成

需要が高まると「後半のオークションでは売り切れて買えないかもしれない」という焦りから、参加者が第1回オークションに殺到する傾向が強まります。これが初回の約定率を押し上げる要因です。

今後、初回の約定率が100%に達した場合、そこであふれた入札は第2回、第3回のオークションへ回ります。その結果、年度後半のオークションも連鎖的に活性化し、最終的には年間を通じた全体の約定率を大きく押し上げることになると考えられます。

GHGプロトコル改訂による今後の非化石証書の展望

現在のGHGプロトコル改定案で提示されている重要な概念の1つが「標準供給サービス」です。これは「規制によるコスト回収、政府による義務化、または公的保有の発電設備からの電力供給」と定義されています。FIT非化石証書は、規制に基づき需要家から広くコスト(賦課金)を回収しているため、このサービスに該当するとみられています。

最大のポイントは、標準供給サービスに該当する非化石価値は「需要家全体に一律で平均配分される(pro rata share)」という考え方です。これが実現すれば、一部の企業が同証書を過剰に獲得して「再エネ100%」を独占的にアピールすることは不可能になります。

(※ 本コラムは公開情報をもとに見解を記載しているものです。重要な判断をされる際はGHGプロトコルの公開資料をご確認ください)

最後に

FIT制度の買取期間終了(卒FIT)や、FIP制度への移行推進により、市場に供給される「FIT非化石証書」の販売総量は今後劇的には増えづらい構造にあります。FIT非化石証書の上下限見直しやGHGプロトコル改訂などさまざまな制度改正の動向を確認しながら、いち早く行動することが重要です。

当社は、グリーン電力証書の証書発行事業者として登録し、事業を行っています。当社のグリーン電力証書は単発購入から固定価格での複数年予約まで幅広く対応可能です。

アワリーマッチングに関しても、運営主体である日本品質保証機構(JQA)と協議のもと、制度設計に努めています。調達のご相談や、グリーン電力証書化のお手伝いもしておりますので、ご興味のある方はお気軽にご連絡ください。
Mail: carbon-offset@yachiyo-eng.co.jp

執筆者:中嶋 琉依

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