サプライチェーン排出量とは? 算定方法の基本4ステップとScope3の15カテゴリ

脱炭素の潮流が強まる昨今は、自社だけでなくサプライチェーン全体でのGHG排出量を把握することが求められています。サプライチェーン排出量の算定は、削減目標の設定や情報開示の前提となるため、企業にとって重要な活動の1つです。
この記事では、サプライチェーン排出量とは何か、どのように算定すればよいかを環境省のガイドラインに基づいて解説します。サプライチェーン排出量の管理業務に初めて携わる方のお役に立てば幸いです。
サプライチェーン排出量とは
サプライチェーンとは、「商品の企画・開発から、原材料や部品などの調達、生産、在庫管理、配送、販売、消費までのプロセス全体」です(経済産業省 2021)。そしてサプライチェーン排出量とは、サプライチェーンにおける事業活動に伴って発生するGHG排出量全体であり、自社の直接排出量に加え、原材料調達から製造、物流、製品の使用・廃棄までを含む間接排出量の合計を指します(環境省, 経済産業省 2026)。
サプライチェーン排出量には、原材料メーカーや輸送業者といった取引先や関連業者の活動における排出の一部も含まれます。自社だけでなくサプライチェーン全体での排出量を把握することで、事業活動が環境に与える影響をより詳細にとらえ、排出量削減に向けた取り組みを推進しやすくなるのです。
サプライチェーン排出量の算定と削減に向けて、GHG排出量の算定・報告に関する国際的なガイドライン「GHGプロトコル」を把握しておく必要があります。GHGプロトコルは、サプライチェーン排出量を3つのScopeに分類しています(GHG Protocol 2004)。Scope1,2,3をわかりやすくまとめると以下のとおりです。
Scope1:事業者による直接排出
(例)自社工場での燃料燃焼、社用車の走行
Scope2:他社から供給された電気・熱・蒸気の使用に伴う間接排出
(例)オフィスや工場などでの電力消費
Scope3:取引先や消費者などによる間接排出。15のカテゴリに分かれる
(例)原材料の製造、製品の輸送や廃棄
多くの業種において排出量の多くをScope3が占めるため、脱炭素を効果的に推進するには、Scope3排出量を適切に算定し、サプライチェーンの上流と下流における排出状況を把握することが必要です。
2027年3月期以降は、プライム上場企業を対象に、サプライチェーン排出量の開示が義務化されます。サステナビリティ開示基準委員会(SSBJ)が策定したSSBJ基準の「気候関連開示基準」第47項が、「当報告期間中に生成した温室効果ガス排出の絶対総量」をScope1,2,3に区分して開示するよう求めているのです(SSBJ 2026)。詳しくは「【2026年最新版】SSBJ基準はいつから義務化? 「日本初」サステナビリティ開示基準を解説」をご覧ください。
サプライチェーン排出量算定の4ステップ
サプライチェーン排出量の算定にあたっては、環境省が公表する各種のガイダンスが便利です。本項では、「グリーン・バリューチェーンプラットフォーム」および「サプライチェーン排出量算定の考え方」の内容を整理し、算定の大まかな流れを解説します。
1. 算定目的を設定する
まずは、サプライチェーン排出量を算定する目的を明確にします。目的に応じて、算定の範囲や精度が変わるためです。目的の例は以下のとおりです。
- 削減目標の設定
- ステークホルダーへの情報開示
- 削減貢献量のアピール
2. 算定範囲を確認する
目的に応じて、算定の範囲を確認・決定します。原則的に、範囲は以下の5種類です。
- GHG:CO₂/メタン/一酸化二窒素/ハイドロフルオロカーボン類/パーフルオロカーボン類/六ふっ化硫黄/三ふっ化窒素
- 組織的範囲:自社/上流/下流(※)
- 地理的範囲:国内/海外
- 活動の種類:どの事業活動について算出するか
- 時間的範囲:どの時期について算出するか
※ 上流:主に、購入した製品やサービスに関する活動
下流:主に、販売した製品やサービスに関する活動
範囲を明確にすることで、算定に必要な情報収集を始められます。
3. 活動をカテゴリごとに分類する
自社のサプライチェーンをイメージし、Scope3に該当する活動を15のカテゴリに分類していきます。各カテゴリに対応する活動の例は以下のとおりです。
カテゴリ | 排出活動の例 | |
|---|---|---|
1 | 購入した製品・サービス | 原材料や消耗品の調達、包装の外部委託 |
2 | 資本財 | 自社の資本財の建設・製造 |
3 | Scope1,2 に含まれない燃料およびエネルギー関連活動 | 調達した燃料や電力の上流工程(燃料の採掘や精製) |
4 | 輸送、配送(上流) | 調達物流、横持物流、自社が荷主の出荷物流 |
5 | 事業活動から出る廃棄物 | 有価を除く廃棄物の自社以外での輸送・処理 |
6 | 出張 | 従業員の出張 |
7 | 雇用者の通勤 | 従業員の通勤 |
8 | リース資産(上流) | 自社が賃借しているリース資産の稼働 |
9 | 輸送、配送(下流) | 出荷輸送(自社が荷主の輸送以降)、倉庫での保管、小売店での販売 |
10 | 販売した製品の加工 | 事業者による中間製品の加工 |
11 | 販売した製品の使用 | 使用者による製品の使用 |
12 | 販売した製品の廃棄 | 使用者による製品廃棄時の輸送・処理 |
13 | リース資産(下流) | 自社が賃貸事業者として所有し、他者に賃貸しているリース資産の稼働 |
14 | フランチャイズ | 自社が主宰するフランチャイズの加盟者のScope1,2 に該当する活動 |
15 | 投資 | 株式投資、債券投資、プロジェクトファイナンスなどの運用 |
活動のカテゴリ別分類を確認することで、どのカテゴリでGHG排出が発生しているか、算出したGHG排出量をどのカテゴリに計上すればよいかが明らかになります。
4. データを収集し、Scope・カテゴリ別に算定する
算定に必要なデータを収集するにあたり、Scopeとカテゴリ別に以下の3つを決定します。
- 算定方法
- データの収集項目
- データの収集先
例えば、Scope3のカテゴリ1「購入した製品・サービス」の場合、以下のように整理できます。
- 算定方法:購入金額×排出源単位
- データの収集項目:サプライヤー別の購入金額、製品・サービスの種別
- データの収集先:経理、購買部門、サプライヤー
GHG排出量の算定は「活動量 × 排出原単位」の式で行います。活動量とは、事業活動の規模を表す数値で、活動の内容に応じて多様な項目を採用します。以下は、カテゴリ1で一般的な活動量の例です。
- 購入金額
- 購入重量
- 購入個数 など
排出原単位とは、活動量あたりのGHG排出量です。既存の排出原単位データベースを用いることもできますが、可能な限り取引先から取得した排出量(一次データ)を利用することで、より実態に即した値になり、排出削減効果をサプライチェーン排出量に反映しやすくなります。
活動量および排出原単位のデータを収集したら、計算式に当てはめてカテゴリごとの排出量を算出します。

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サプライチェーン排出量算定のポイント
最後に、サプライチェーン排出量の算定を進めるうえで押さえておきたい実務上のポイントを紹介します。算定に関して疑問が浮かんだ際は、環境省の「サプライチェーン排出量算定におけるよくある質問と回答集」を参照することも有用です。
目的と対象範囲をふまえた要件整理
サプライチェーン排出量の算定を円滑に進めるには、必要なデータの収集を始める前に、データの要件を整理することが重要です。算定の目的と対象範囲をふまえ、算定式やデータの粒度を定めておくことで、以下のような手戻りを減らせます。
- 計算段階になって「この活動量項目を選んだのは適切でなかった」と気づく
- 提供されたデータが期待と異なる粒度だったため、再依頼をすることになる
要件整理にあたっては、算出に採用する活動量やデータの粒度、提供先といった要素をExcelなどに書き出します。それらの要件を排出量算定の目的に照らし合わせ、「この算定で目的を達成できるか」「このデータは現実的に取得できそうか」と確認しておけば、データ集計・計算の過程における混乱や作業のやり直しを軽減することが可能です。
データ提供への丁寧な協力依頼
サプライチェーン排出量の算定では、社内外の幅広い関係者にデータ提供への協力を依頼する必要があります。
例えば、カテゴリ1「購入した製品・サービス」については調達部門、カテゴリ7「従業員の通勤」については経理部門といったように、カテゴリごとに関係部署が異なります。また、グループ会社や取引先など、社外とのやり取りが必要となるケースもあります。
依頼してすぐに必要なデータがそろうとは限らないため、早い段階で関係者に連絡し、算定の目的や重要性を丁寧に共有しておくことが大切です。
サプライチェーン排出量の算定は、脱炭素経営の出発点です。サプライチェーン全体のGHG排出量を把握することで、重点的に削減すべき領域を明確にし、実効性のあるカーボンニュートラル戦略を描くことができます。
サプライチェーン排出量の算定にあたっては、環境省が提供しているガイドラインや事例集などが参考になりますが、排出をどのカテゴリに分類するか判断に迷ったり、排出原単位の選択や計算方法に不安を感じたりすることもあるでしょう。また、把握した排出量をどう削減につなげるかという次の一手に悩む企業も少なくありません。
そのような場合は、サステナビリティ・コンサルタントに相談するのも有効な手段です。算定から具体的な削減アプローチまでを一貫して支援できるコンサルティング企業であれば、サプライチェーン排出量算定の仕組みをわかりやすく解説することはもちろん、データ収集や計算のサポート、さらには削減施策の立案・実行まで伴走支援が可能です。
当社の「サステナビリティNavi」でもGHG排出量の算定支援にとどまらず、算定から削減までを見据えた伴走型の支援サービスを提供しております。「排出量計算でわからないことを解決したい」「算定業務を内製化したい」「算定した排出量を実際の削減につなげたい」という方は、お気軽にお問い合わせください。
執筆者:本田 雄暉、樋口 桃子



